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福島第一原発の検証記事を読み、この事故を阻止できなかったのは東電の企業体質があることを改めて知る [原発問題]

 朝日新聞が福島第一原発の検証記事を掲載した(4月10日)。なかなかしっかりとした報告ではあった。今回の事故がここまで拡大した背景には、やはり東電という企業体の1)隠蔽体質、2)責任回避体質、が大きかったことが理解できた。まず、事故が起きてから官邸には「原子炉の冷却ができなくなっても、8時間までは問題ありません」と、まったくもって無用の安堵を官邸に与え、原子力安全委員会の斑目春樹委員長も「外部に放射能が出るような事態にはなっていない。電源に問題があるというだけで、連鎖反応は完全に止まっている。あとは冷やすだけ」と官邸に報告している。
 またベントの指示を出したのは官邸サイドであるが、それを東電は無視する。12日の午前1時半頃に既に指示を出しているのだが、実施するのは午前10時すぎであった。その間、菅首相は自衛隊ヘリで福島第一原発に行き、無視する東電の武藤副社長に怒る。
 また、15日には東電は官邸に「福島第一原発から社員を撤退させたい」との報告を出して、もう東電に任せていたら国が滅びると考えたのか、首相が東電に乗り込むことになる。その際、「法的な担保を取らなければならない」という出席者の意見(おそらく官僚だと思われる)を枝野官房長官が「法律のことなんてどうでもいい。ここは乗り込むべきだ」と強引に足場をつくることにした。
 この流れをみると、まったく原発の事故処理ができるような体質にない東電、それをどうにかぎりぎりのところで制御したのは官邸サイドであり、菅首相と枝野官房長官はよくやったな、と私などは思うのだが、どうも朝日新聞はそうは捉えてないようだ。
 小見出しとして「報告うのみ」と、あたかも東電と原子力安全委員会の報告をそのまま受け取ったことを問題であると示唆しているが、普通、報告は信用しますよ。いちいち、その裏を取るような暇は官邸にはないでしょう。大地震の直後なのだし。問題は、いい加減な報告をした東電と原子力安全委員会にあるのは明らかであるのに、これは責任転嫁である。
 また、野党はベントが遅れたことに「初動のミス」を指摘して、この問題を国会で検証、追求するといっているが、はっきりいってこの朝日新聞のドキュメントから推察すると、でたらめ東電に対して、よくここまでしっかりと対応できたな、と思う。むしろ、これが東電とずぶずぶの関係の自民党政権だったら、ここまで素早くは出来なかったと思われるし、官邸が東電に乗り込むようなこともなかなか出来なかったと思われる。私は、むしろこの記事を読んだ後、東電への批判こそ高まりこそすれども、菅首相達はよくやったと思った。しかし、その記事を書いている朝日新聞の記者はそうは思っていないようで、菅首相が仕事を抱え込むことで、問題が悪化したように書いている。しかし、この記事は、小見出しで「報告うのみ」をも批判しているのである。報告うのみ、と人を信用すると批判し、仕事を抱えるとまた批判するのでは、ダブルバインドである。一体全体、どんな人であれば納得するのだろうか。
 さて、仕事を抱え込んだことで、「省庁間の連携に影響を与えた可能性がある」とも記事は批判しているのだが、そもそも霞ヶ関の省庁間の連携なんてないよ。この大変な環境災害において環境省がまったく出てこないのが、その証拠だ。本当に我々の環境を守るべき環境省が、この非常事態にほとんど沈黙を守っているのはどうしてなのだろうか。まあ、黙っていることは経産省と連携しているのかもしれないが。
 この朝日新聞の記事を読み、福島第一原発の事件で、大犯罪人は東電であることは明々白々となったが、むしろ官邸は100点満点ではないだろうが、しっかりと責任を果たしたのではないか、との印象を強く受けた。これを書いている朝日新聞の記者が、官邸を批判しようという視点で事実をまとめているということを踏まえても、相当、この記事から判断したとしても、よくやったのではないかと思われる。とはいえ、まだ危機は続いている。傍観者的な無責任な政権批判をしているのではなく、的確な責任追及をすることが、これからも起こりうる危機を未然に防ぐことに繋がると思われる。何しろ、東電にこの危機管理をさせないように一刻も早くすることが肝要であろう。というよりかは、東電を解体するべきである。そして、現在、福島第一原発の事故処理に対応している人達を、日給1万円ちょっとではなく、日給10万円ぐらいにして、放射線量測定器も全員にしっかりと与え、ちゃんとこのリスクに応じた対応を国ができるようにすべきである。そのくらいの負担を税金でするのは、まったく異論はないですよ。

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