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イオンとウォルマートは違うのか? [サステイナブルな問題]

イオンの広報とのやり取りで、イオンの人が得意気に主張したのは、「ウォルマートとイオンとは違います」ということであった。私も同じではないと思っていたので、「そうですね、違うところがありますね」というと、「当然です」、「当然です」、「当然です」と三回も繰り返した。

イオンはウォルマートと違う。それは、イオンの方がウォルマートより、遙かに強力であるからだ。したがって、イオンの方が日本の中小都市の商店街等に与えるダメージもウォルマート以上であろう。これは大変な事態だ。まあ、もう既に大変な状況になっている。さて、しかしイオンがこのように今の繁栄を築けるようになったのはウォルマートのおかげである。1990年代、ウォルマートが強烈なロビー活動を、アメリカ議会を通じて行い、郊外で大規模ショッピングセンターが立地できるように、大店法を中心とした我が国の法律を弱体化させていく。しかし、ウォルマートが日本に進出できる条件が整った時、その規和の流れにうまく乗っかったのは皮肉にもウォルマートではなくてイオンであった。そして、ウォルマートは結局、日本の市場に未だに入り込めていない。そして、代わりに、この世の春を謳歌しているイオン。高速道路無料化もさらにイオンの商圏を広げることになるだろう。地方の消費者も多くの商品を低価格で得られるようになってハッピーであろう。ウォルマートと違って、イオンは従業員の福利厚生にも目が行き届いている。ウォルマートのように従業員の組合活動潰しのようなことはしていない筈だ。

さてさて、それじゃあイオンが進出しても、その地域はいいことばかりじゃない、というとそんなことはない。今、発売中の「週刊新潮」のイオンの批判記事で書かれているようなことはおそらく事実であろう。まあ、現段階では大雑把ではあるが、イオンが進出すると、地方経済は衰退し、中心市街地は空洞化し、その都市のアイデンティティは消失する。地方経済が衰退するのは、イオンで消費されるお金は地方にほとんど還元されないから(従業員の給料というかたちくらいでしか地元には還元されない)。中心市街地が空洞化したのは、群馬県の太田市の事例が雄弁に物語っている。これは、朝日新書の『下流同盟』(三浦展編著)で私が紹介しているが、当時、東日本で最大に近い床面積を擁するイオンのショッピング・センターができたことなどを契機として、中心市街地がシャッター商店街となり、そこに多くの風俗街が立地したという事例である。まあ、詳しいことは、前述の新書を読んでいただければと思うが、まあイオンがその地域に無害ということは、ウォルマートがその地域に無害というのと同じだ。もちろん、従業員には優しいという点と、ウォルマートよりさらにマーケティングに優れているという点とかは違う。しかし、地方を衰退させるとてつもない影響力を有していることは間違いない。そして、私への暴言を広報が平気で電話でのたまうような下品な会社であることも分かった今、まあ、地方の一般的な人々の生活の豊かさを壊すことなど屁でもないという印象を個人的には抱いている。

下流同盟―格差社会とファスト風土 (朝日新書)

下流同盟―格差社会とファスト風土 (朝日新書)

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 新書



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