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イオンモールりんくう泉南を視察する [サステイナブルな問題]

大阪府泉南市にあるイオンモールりんくう泉南を視察しに行く。「週刊新潮」にて一坪500円で土地を借りて、その結果、泉南の商店街を壊滅に導いたと指摘されていたショッピング・モールである。このイオンモールりんくう泉南は、関西国際空港の対岸にあるりんくうタウンからちょっと南にいった海岸沿いにある。

2004年11月に開業。ここは敷地面積14ヘクタールと東京ドーム3個分より大きく、延べ床面積はなんと15.6ヘクタール。とはいえ、商業施設面積は7.7ヘクタールであるから面積的には半分以上は駐車場である。しかも、駐車場はこの敷地外にも設けられており、私が訪れた時はそこも相当の数の自動車が駐車されていた。さらに建物は4階建てなのであるが、3階と4階と屋上は駐車場。なんか駐車場だらけである。正規の駐車場だけで4300台。すごい駐車場の数だ。ここは、開業したことで、沿線道路の交通量が増加し、「休日に激しい渋滞を引き起こす要因にもなっている」(Wikipedia)そうだ。まあ、これだけ交通需要を集中させたのだから、渋滞もやむをえないだろう。さて、渋滞というのは外部不経済である。外部不経済を生じた場合は、それを是正するために、その外部不経済を内部化しなくてはならない。ここで外部不経済で損失を受けているのは、日常生活でこの道路を利用したり、ここを通過交通道路として利用したりする人達である。そしてこの外部不経済をもたらしているのはイオンである。イオンは本来的には、このような道路という公共財の機能不全となる渋滞を起こすことは避けなくてはならず、避けられないのであれば、それ相応の補償を金銭で支払うべきである。アメリカのヴァーモント州のバーリントン郊外のウィリストンに出店したウォルマートは、出店する際に、この道路渋滞をもたらすということで、州に環境負荷税のようなものを払っていた筈である。ここらへんの詳しいことは流通経済大学の原田英生先生の著書「ポスト大店法時代のまちづくり」に書かれている。この場合、イオンもそれ相応の環境負荷税を自治体に支払うべきである。泉南市の住民や商店街の人達、そして行政はイオンを訴えるべきであると思われる。

それにしても、そのショッピング・センターは巨大である。この大きさは例えばカリフォルニア州のヘアキュール市(ヘラクレス市)が、市の既存商業地に壊滅的なダメージを与えることを主な理由に2006年にその進出を阻止したウォルマートがたかだか6.9ヘクタールであることを考えると、もはやイオンの強大さはウォルマートをも越えるであろう。そういうことを考えると、あのウォルマートでさえ、市場経済の砦であるアメリカでもその立地等で規制を受けていることを考えると、イオンに対して、行政、そして市民がしっかりとした対応をすることが求められる。まずは、イオンの問題というのをしっかりと周知を図ることが肝要であろう。私のようなノンポリで風見鶏で偽善的な人間でさえ、義憤を感じさせるようなイオンはろくでもない会社であるのだ。そして、その景観的な醜悪さ、コミュニティを潰す巨大さ、周囲に渋滞をはじめとした外部不経済をもたらす横暴さを、イオンモールりんくう泉南を訪れて、改めて再確認した。この問題から、このろくでもない私も一介の学者として、キモを据えて取り組まなくてはならないと考えている。とりあえず、現段階の成果として、三浦展氏との協働作業ではあるが、『下流同盟』、『地方を殺すな』、『脱ファスト風土宣言』などがある。関心のある方は読んでいただきたい。また、法律的な問題に関しては、原田英生先生の著書や、矢作弘氏の『大型店とまちづくり―規制進むアメリカ、模索する日本』、これに関する地域の問題点をいち早く指摘した書として三浦展氏の『ファスト風土宣言』なども参考になる。また、イオンより脆弱なウォルマートに関する悪行の数々を糾弾した本として日本語でもフィッシュマンの『ウォルマートに呑み込まれる世界』、ビル・クィンの『ウォルマートがアメリカをそして世界を破壊する』などがある。他にも参考になる文献は多くあると思われるが、とりあえずここらへんから読み始めるといいと思う。

下流同盟―格差社会とファスト風土 (朝日新書)

下流同盟―格差社会とファスト風土 (朝日新書)

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 新書



地方を殺すな!―ファスト風土化から”まち”を守れ! (洋泉社MOOK)

地方を殺すな!―ファスト風土化から”まち”を守れ! (洋泉社MOOK)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 単行本



脱ファスト風土宣言―商店街を救え! (新書y)

脱ファスト風土宣言―商店街を救え! (新書y)

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 新書



ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2004/09
  • メディア: 新書



検証・地方がヘンだ!―地方がファスト風土化し、液状化している! (洋泉社MOOK―シリーズStartLine)

検証・地方がヘンだ!―地方がファスト風土化し、液状化している! (洋泉社MOOK―シリーズStartLine)

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 単行本



アメリカの大型店問題―小売業をめぐる公的制度と市場主義幻想

アメリカの大型店問題―小売業をめぐる公的制度と市場主義幻想

  • 作者: 原田 英生
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 単行本



ポスト大店法時代のまちづくり―アメリカに学ぶタウン・マネージメント

ポスト大店法時代のまちづくり―アメリカに学ぶタウン・マネージメント

  • 作者: 原田 英生
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 1999/04
  • メディア: 単行本



ウォルマートがアメリカをそして世界を破壊する

ウォルマートがアメリカをそして世界を破壊する

  • 作者: ビル クィン
  • 出版社/メーカー: 成甲書房
  • 発売日: 2003/08
  • メディア: 単行本



ウォルマートに呑みこまれる世界

ウォルマートに呑みこまれる世界

  • 作者: チャールズ・フィッシュマン
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2007/08/03
  • メディア: 単行本



大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本 (岩波新書 新赤版 (960))

大型店とまちづくり―規制進むアメリカ,模索する日本 (岩波新書 新赤版 (960))

  • 作者: 矢作 弘
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/07/20
  • メディア: 新書



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