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青い日本、赤い日本 [道路整備事業の大罪]

ブッシュ・ジュニアが2000年そして2004年に大統領選を戦った時、共和党に入れた州を赤、民主党に入れた州を青に色分けすると、東西の海岸州は青色に塗られ、そして真ん中は赤色に塗られ、明瞭なる色分けがなされた。この赤いアメリカと青いアメリカは、同じ国民でありながら、違う考え方、価値観を有しており、あたかも一つの国に二つの国が存在するように内外で捉えられた。

さて、今回の選挙では自公政権が壊滅的な惨敗を喫したわけだが、都道府県別にみると必ずしも「山が動いた」わけではないことも見えてくる。例えば、小選挙区で自民党が完勝したところも福井県、鳥取県、島根県、高知県と4県ある。自民党が一議席も取れなかったところが沖縄県、岩手県、長崎県、大分県、秋田県、新潟県、長野県、山梨県、福島県、静岡県、愛知県、埼玉県、滋賀県と13県もあったことを考えると、随分と対照的であると思われる。もちろん立派な自民党の政治家が出馬している可能性がその当選率の高さの背景にあるのだろうが、同時に、これらの地域は依然として、自民党政権を保持することで大きなメリットがあると考えているのである。すなわちアメリカ風でいえば赤い日本ともいえるかもしれない。これら自民党完勝県の県民当たりのGDPをみると、下から4位、9位、10位、29位と福井県の29位を除くと低い。また、島根県は県民当たり公共投資額が全国で一位を維持してきた県である。それで、島根県は果たして豊かになったのだろうか。県民当たりのGDPは全国で下から10位なので、公共投資額というテコでは経済がもはや浮揚しなくなっていると思われる。この10位の経済を維持するために公共投資を他の地域より多く実施することが政治家の仕事であると、もしこの状況になっても考えているとしたら問題であろう。ちなみに、ちょっと古いデータしか手元になくて申し訳ないが、2002年度の同順位は島根県、鳥取県、高知県、石川県となっている。福井県を除けば、県民当たりの公共投資額が全国1位、2位、3位が性懲りもなく公共投資を期待して自民党に投票しているということが見えてくる。この時分になっても、まだそんな補助金に依存しているのか。まあ、地方の経済は大変な状況なので、そのように考えたくなる気持ちも分からないでもないが、地方の経済を大変な状況にしてしまい、あたかもシャブ中毒のような補助金中毒にさせてしまった張本人こそ自民党だったと思われるので、そういう風に捉えると自民党が戦後の地方にもたらした罪はやはり大きいものがあったと思う。随分と人々の目が覚めたが、相変わらず「赤い日本」が存在していることは、自民党の惨敗という状況下においても認識をした方がいいと思われる。

とりあえず、しかし今回の選挙の結果には高揚感を覚えた。多くの公職の声がおそらくかからなくなるリスクを冒して、私も新書のタイトルを「道路整備事業の大罪」という下品なものにして選挙前に出版したのである。残念ながらそんなに売れていないのだが、しかし数名の購読者が、拙著を読んで選挙に足を運んでくれたら私にとっては万感の喜びである。本当は「赤い日本」の地域の人に多く読んでもらいたかったのだが、どうも選挙結果をみる限り、あまり読まれていないようだ。公共事業を持ってくるのが使命のように考えている節もある古賀さんも森さんも当選したようだし。とはいえ8月30日は日本の舵取りが大きく変わった日として人々の記憶に残るであろう。民主党にも問題は多いだろうが、「官僚主導ではなく国民主導の政治」というスローガンはたいへん説得力があるし、これこそが日本の国家に豊かさをもたらすかもしれない可能性を含んだ道であると思われる。官僚の人達は大変優秀で我が国の財産だと思う。しかし、その官僚の人達の能力を国民のために活かすシステムはうまく機能していない。そこを直すことは官僚依存が強すぎた自民党ではできなかった。民主党も相当このシステムを改変するのには手こずるであろうが、今日は小さいながらも大きな一歩を前進したと思う。


道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

道路整備事業の大罪 ~道路は地方を救えない (新書y)

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2009/08/06
  • メディア: 新書



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