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ヘッティンゲンを訪れる [都市デザイン]

デュッセルドルフの近場で木組みの家を見たいと思ったら行くべきところはヘッティンゲンであろう。第二次世界大戦での爆撃を免れたルール地方では珍しい町である。エッセンからSバーン一本で行けるし、ボーフムからもライトレールで行くことができる。私はエッセンからSバーンで行った。この路線はルール川沿いに走っているのだが、ルール川沿いのランドスケープが美しいので驚いてしまう。ルール地方というと工場や炭鉱、そして工場排水等で汚染された河川といったイメージがあると思うが、鉄道幹線ルート(デュースブルク、エッセン、ボーフム、ドルトムントを結ぶ線)の南側の丘陵地帯のランドスケープは牧歌的で美しいと思う。特にこのルール川沿いやエッセンの南のS6ルート沿いの景観はすぐれていると思われる。

さて、ヘッティンゲンである。ここは訪れて初めて気づいたのだが、以前、ルール大学のウタ・ホーン先生に連れ来てもらったことがある。当時は、ボーフム市だろうと思っていたのだが、ボーフムではなくてヘッティンゲンであったのだ。地図等で勝手に都市のイメージを膨らませて、実際そこに訪れて、イメージと実態とのギャップを楽しむのが趣味の域にまでなっている私は、勝手にヘッティンゲンのイメージを膨らませていたのに、それは以前、来たことがあった町であったというのはちょっとがっかりさせられた。ともかく、ヘッティンゲンの駅から大通りを歩道橋で越えると、中心市街地が始まる。駅にはドイツのヨドバシカメラであるザターンがどーんと構えているショッピング・センターがある。このようなショッピング・センターを郊外部ではなく中心市街地に入れ込むといったドイツ人の対応は非常に賢明だ。以前、イギリスのケンブリッジが郊外立地ではなく中心市街地に大型店を誘導させる政策を実施していたことなどに感心したりしたが、なんのことはない。ドイツではほとんどどこでもやられているのだ。やらなかったオーバーハウゼンが逆に事例として多く研究されてしまっているような状況にあるのだ。日本は大店法を撤廃するとき、経産省はアメリカやイギリスなどを中心に視察をして研究をしていたが、ドイツをもっと徹底的に研究するべきだったと思われる。

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(中心市街地の端っこにあるショッピング・センター)

さて、ヘッティンゲンの中心市街地はそれほど大きくはなかったが、木組みの家々と細い路地の一画はなかなかいい雰囲気だ。家々のペンキの色は白でほぼ統一されている。ツェレやケドリンブルク、ベロニゲローデといったところの木組みの家がカラフルであるのとは対照的である。まあ、これも地域の個性であり興味深い。レストランなども多く、ここがルール地方の人々の日帰り観光地としての役割を担っていることを知る。確かにこの中心市街地のオープン・カフェでコーヒーを飲んでいると、タイムスリップしたような錯覚を覚える。あたかも中世の田舎町のような木組みの斜めに傾いた家々に囲まれて、ゆったりとした時間を過ごしているのはなかなか気持ちのいいことである。こういう経験を日常的にしていると、古いものの価値、歴史的な積み重ねといったものを大切にしようという価値観が社会としても共有されるのかもしれない。特に、このような貴重な財産が戦争によって壊滅的に破壊されたという経験を有しているので、なおさらその思いは強いのではないだろうか。破壊したイギリスを非難できないような過ちを自ら犯してしまっていることもあるし。

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(教会の屋根がとんがり帽子が自らの重さで傾いているように傾いている)
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