SSブログ

アムトラックのキャピタル・コリドールに乗る [その他]

アムトラックのキャピタル・コリドールに乗ってバークレイからデービスまで移動する。バークレイには3年ちょっと住んでいたが、ベイ・エリアのアムトラックには一度も乗ったことがなかった。今回が初めてである。もちろん、アムトラックが走っていることは知っていた。友人も数名、乗ったりしていたし、サクラメントの方面から通学に利用していたものもいた。しかし、駅が不便なところにあることや、特に利用する必要性もなかったので利用しないで今日に至っていた。そもそも本数が恐ろしく少ない。1時間に1本来れば、いい方である。

ところが、9月にフィールドスタディで学生達をデービスまで引率することになり、バスを借り切ってサンフランシスコからデービスまで行くと、結構金がかかることもあり、アムトラックで移動することを思いついたのである。とはいえ、自分も一度も乗っていない交通手段を使わせることには非常に躊躇するものがある。ということで、下見をして乗ってみたのである。

事前にバークレイに住む友人や旅行代理店の人に、サンフランシスコの高速鉄道であるバートから乗り換えるのにはどこの駅がいいのかを問い合わせたのだが、誰も正解を教えてくれなかった。バークレイの駅で乗り換えるといいとか、エミリービルに行くといいとか、言ってきてくれたのだがすべて外れである。いかに人々がアムトラックを利用しないか、知らないかがこの事実からも分かるというものだ。正解はバートのフレモント線の終点であるリッチモンドである。この駅だけがバートとアムトラックの駅が隣接している。ということで、バートでリッチモンドの駅に行く。リッチモンドの駅に来るのも初めてであった。というのは、リッチモンドとは名ばかりで、実際はイースト・ベイでも治安が悪いことでよく知られていた町であるからだ。アメリカに留学した時、サマースクールで英語の授業を一緒に受けていたポーランド人が、リッチモンドに下宿をしたら、目の前で射殺事件が起きて慌ててすぐに引っ越したんだ、という話をしたのだが、それ以来、リッチモンドからずっと足を遠ざけていた。まあ、そういうイメージを抱いていたので、乗換の駅が近いといいなと期待していたら、本当にプラットホームが隣接しており、まさに乗換駅としては理想的であった。しかし、私が列車の時間を間違えて覚えていたので、このリッチモンドで1時間30分も待つことになってしまった。日本の駅と違って、周辺に喫茶店やスタバといったものが一切ないので、仕方なく誰もいないホームで時間を潰す。多少、身の危険も感じつつもどうにもならない。1時間30分の待ち時間で二人、物乞いがやって来た。一人は黒人で、85セントを恵んでくれ、と言ってきたので、やんわりと断ったら、随分と丁寧に「失礼しました」と頭を下げた。もう一人は白人で、バートのチケットをくれ、と言ってきたので、やはり丁重に断ったのだが、こちらは、ふふん、という感じで去っていった。まあ、どちらも何も問題がなかったが、誰もいない中、物乞いとはいえ、迫られてくると緊張するものがある。なんせ、リッチモンドだし。

列車は時間より数分遅れで到着した。二階建てのおそろしくごつい列車である。乗車して、チケットを購入する。18ドルだ。生憎100ドルしかなく、それで支払おうとすると、「得意のお釣りがない」攻撃を喰らう。クレジット・カードでもいいか、というといいと言うので、それで支払う。とはいえ、クレジット・カードの上をボールペンでごしごし押して型を取る、という極めて原始的なことをしていた。なんか、本当にアメリカは先進国なのか、というような光景だ。車掌さんはインド系の女性であったこともあり、まるでインドにいるような気分だ。

まったく期待しないでこの列車に乗ったのだが、結構快適であった。特に車窓に展開する光景は素晴らしいものがある。サンフランシスコ湾に沿って列車は走っていくのだが、サンフランシスコ湾を挟んで見えるタム山の光景は感動的だ。それからアメリカ川に沿ってマルティネズに向かう車窓もいい。こういう景色は、高速道路からはまったく分からない。鉄道旅行の方が、より地域の風土を堪能することができる。よく通ったことのある地域であるのに、自動車と鉄道だとまったく違った印象をも与える。マルティネズの次はスイスン・シティに停まる。サステイナブル・コミュニティとして紹介されたこともある事例だ。とはいえ、車窓からは、どこがサステイナブル・コミュニティなのかはよく分からない。スイスン・シティを抜けた後は、アメリカでも最も豊かな広大な農業地を走り抜ける。これもよく知っている筈の光景なのだが、自動車と列車からだと視点も違っているので、新鮮に映る。列車は5時00分にデービスに着く。リッチモンドから1時間10分の旅であったが、思っていたよりもはるかに楽しかった。自動車旅行とは違っているが、ある意味ではよりアメリカの大地が理解できると思われる。

Amtrak9892.jpg(サンフランシスコ湾に沿って、列車は北上する。こんな風光明媚な沿線であることは、乗るまで気付かなかった)
AMTRAK9895.jpg(ヴァレホ市とクロケット市を結ぶ橋の下を走る)
AMTRAK9899.jpg(マルティネス市の付近の車窓からの光景)
AMTRAK9912.jpg(デービス駅)

nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0