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自転車都市デービスで自転車に乗る [都市デザイン]

サンフランシスコから自動車で1時間ほど東に行ったところにデービスという大学都市がある。人口は約6万4千人(2005年)であり、そのうちの半分が学生である。この都市はいろいろと面白い都市政策を1970年頃から展開してきており、筆者も新著「衰退を克服したアメリカの中小都市づくり」で紹介しているが、その中でもよく知られているのが自転車政策である。

衰退を克服したアメリカ中小都市のまちづくり

衰退を克服したアメリカ中小都市のまちづくり

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 学芸出版社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 単行本


 デービス市が1993年に発表した「自転車道路計画」(The Bikeway Plan)では、次のように政策目標が記されている。
「デービス市は統合された自転車専用ネットワークを構築することを目標としている。同市は、環境負荷の低い、自動車の代替交通手段としての自転車交通の重要性を認識しており、通勤・通学そしてレクリエーションにおける自転車交通を促進させるためにも、自転車による安全で快適で利便性の高いアクセスを全市内に確保しようと努めている。自転車利用は、エネルギーを節約し、より清浄な大気をもたらし、そして市民の体力を増強させることになる」(City of Davis, The Bikeway Plan.1993)。
 そして、この計画に基づき積極的に自転車道路の整備を推進させてきた結果、、80キロメートルの自転車レーン、83キロメートルの自転車専用道路を整備することに成功している。市内の幹線道路の9割以上は自転車レーンが設けられている(市内のすべての道路は2004年時点では総延長が251キロメートルあるから、ほぼ3分の1に自転車レーンが設置されていることになる)。
 このような積極的な促進政策によって、通勤交通の17%が自転車利用となっている(2002年の統計調査)。アメリカの他の都市では2%もあれば高いと考えられていることを踏まえると、突出して高い数字であることが理解できる。デービス市の人口は64000人程度であるが、デービス市には60000台の自転車があると推測されている。
 このような努力が評価され、デービス市は1995年に全米自転車連盟(the Bicycle Federation of America)から「アメリカ一の自転車都市」として表彰された。そして、2000年には全米サイクリスト同盟(The League of American Bicyclists)から「自転車に優しいコミュニティ」として表彰されるなど、自転車都市として全米に知られるところとなる。
 まあ、そういうことを新著では紹介していた。
 ところが、そういうことを書きながらも、実は筆者自身はデービス市内を自転車で移動したことがなかった。もうデービスには両手に余るほどの回数、訪れている。しかし、ほとんどの場合、自動車で訪れていたと思う。今回は初めて列車で訪れたこともあり、一人で訪れているにも関わらず、足としての自動車がない。これは一人で訪れた際では初めてのケースだ。最初はレンタカーでも借りようかとも思っていたのだが、せっかくの機会である、自転車を代わりに借りて移動しようと思い立ったのである。
 さて、早速、自転車を借りようと思ったのだが、これが意外と難しかった。ホテルで尋ねると、二ブロック先の自転車屋で借りられるだろうとのこと。しかし、店のお兄さんに聞くと、ここでは貸していない。というか、デービス市では貸している店は一軒しかないだろう、とのこと。そこを尋ねると6ブロック先の店、「ケンズ・バイク・アンド・スキー」という店だと教えてくれた。Gストリートと7ストリートの交差点にある店だという。自転車都市ではあっても、そうそうレンタルはしていないことを知る。随分と遠いが、とことこと歩いて店までたどり着く。生協の隣にあった。
 さて、ここでは自転車を借りることができた。4時間で7ドル。1時間そこそこで十分なのだが、まあ最短の単位が4時間だというのと7ドルは安いので借りる。ちなみにストックは10台くらいだそうだ。ちょっとこの数だと、フィールドスタディで学生達と自転車で移動することは難しい。
 自転車を借り、デービスの自慢の自転車レーン、そして自転車専用道路を走る。快適だ。確かに自転車で円滑に移動できるよう、いろいろと工夫されている。自転車を借りた店で、デービスの自転車地図を無料でもらっておいたので、行き先もしっかり決められる。とりあえず、最初は線路に沿って北に行く。ノース・アリア・ドレイネージ・ポンドという名前の池がとりあえずの目的地である。この池に着くと、多くのガチョウがいた。周辺の写真を撮っていたりしたら、いつのまにか筆者に正対して口を開けて威嚇している。なんか不愉快だなあ、と思いつつ、その昔、房総半島の方で黒鳥に攻撃されたことを思い出し、とりあえず去る。ここらへんは、環境都市を標榜しているデービスでも道路幅が広く、人口密度も低く、通常のアメリカの郊外住宅地とあまり変わりはない。しかし、アメニティは素晴らしいものがある。

DAVIS9930.jpg(自転車しか走れません、と明記している看板)
DAVIS9937.jpg(自転車専用道路を占拠するガチョウ達。その後、威嚇されそうになる)

 自転車専用道路を走る。自転車専用道路は、まさにサイクリストのための道路であり、これは自転車好きには堪らないのではないだろうか。というか、自転車に大して関心がない人でも、この町に住んでいたら自転車に乗ってしまうであろう。その後、シカモア公園を抜け、自転車専用の高速道路橋を越え、アロヨ公園に着く。アロヨ公園では、幼稚園の年少クラスくらいの少女が、幼児用の三輪車のような乗り物をその年にしては高速で走らせながら、筆者に向かって「よー」と声がけしてきた。これには、のけぞるくらい驚いたが、挨拶を仕返す。この町は、子供達が育つのには相当、理想的かもしれない。昼食を一緒にしたデービス大学の先生が、「この町は子育てには最高の環境だよ」と言っていたことを思い出す。とりあえず、自転車に乗るのが上手くなるのは確かだ。

DAVIS9949.jpg(アロヨ公園沿いの自転車専用道路)
DAVIS9939.jpg(アロヨ公園沿いを走っているとリスと遭遇。別に珍しくないが、ポーズがちょっと面白かったので)

 アロヨ公園から、まあ、とりあえずデービスにいるんだから、と言うことでビレッジ・ホームズまで足を延ばす。ビレッジ・ホームズは相変わらず、素晴らしい住宅地であった。ちょうど葡萄や食べられる街路樹の果物も実りつつあり、なんか冬とかと比べると夏のビレッジ・ホームズはより魅力を放っている。
 さて、ビレッジ・ホームズに着いたくらいから、ちょっと疲れてきたので戻る。もう5時を回っていることもあり、自転車専用道路の下り車線は多くの帰宅車が走っていた。確かに通勤・通学時は自転車だらけだ。さすが自転車都市。こういうことは、実際、自転車を利用しないと分からないことであった。既に本は出してしまったが、本を書いた時点ではあまり分かっていないデービスの凄さを知った日であった。

DAVIS9972.jpg(帰宅時は多くの自転車通学者、通勤者が家路へ向かう)
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