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6年前に磐梯リゾート開発そしてリゾート開発に関して執筆した原稿を再掲する [都市デザイン]

先月、裏磐梯に久しぶりに訪れた。そこで、4月23日のこのブログでもコメント(http://urban-diary.blog.so-net.ne.jp/archive/20080423)を書いたりしたのだが、たまたまコンピューターのハードディスクの中に6年前に、某会社のホームページ用の原稿として執筆したものがあったので、再掲する。リゾート法で1990年代に日本中がリゾートづくりに奔走したが、結局、どれもこれもうまくいかず、日本の国土は無惨な残骸を晒すことになる。何が失敗の原因かといえば、そもそも何がリゾートであるかが理解できなかったこと、すなわち本当に豊かなリゾートをつくる知識がなかったことなのではないだろうか?

(以下、6年前の原稿)
磐梯リゾート開発(株)(資本金12億円)が2002年10月16日に東京地裁へ民事再生手続き開始を申請した。同社は、福島県の磐梯高原を中心としたリゾート開発を実施すべく、1987年6月に福島県西部の自治体を中心に設立された会社で、リゾート法の第一号として宮崎県、三重県などとともに指定された「会津フレッシュリゾート構想」の具体化を目指して、総事業費約1000億円が投じられたリゾート法の期待の星であった。「アルツ磐梯」という長期滞在型のリゾートを経営していたが、需要を過大に見積もった事業計画、開業直後のバブル経済の崩壊などで、リゾート施設規模も大幅に縮小され、その後もリゾート需要自体が衰退したこともあり、経営環境は悪化、遂に経営破綻に至ってしまった。
 首都圏という巨大マーケットを近距離に控え、磐梯朝日国立公園を中心とした豊かな観光資源を擁した会津フレッシュリゾートは、その後国土庁が承認した全国41箇所のリゾート構想の中でもダントツに成功するポテンシャルを有していた。ある意味で、国内に「リゾート」というライフスタイルを定着させる先導的な役割を担うことができたと思われる地区において、今回の磐梯リゾート開発(株)の倒産は極めて残念である。
 しかし、一方で極めて貴重な我が国の自然環境を有しながら、そして国立公園という制度的にも保全されていたこの地区において、スキー場、ホテル、温泉施設、といったその土地の風土性を無視した画一的な開発を安直に進めてしまい、せっかくのポテンシャルを生かし切れなかった。しかも、スキー場という観点からは、この地区は雪質、滑走距離などから必ずしも競争力を有しておらず、それにも関わらず、美しい山肌を無惨にも削り取るような開発をしたのは、人々の真の需要を見極められなかった愚行であった。この磐梯の美しい山こそが、どこも真似ることができない貴重な資源であり、スキー場などでは決してなかったのに。
 宮城県に薬莱リゾートという、これもリゾート法によって指定されたリゾートがある。会津フレッシュリゾートとは異なり、自然景観もあまり個性がなく、特にこれといったセールスポイントはない。しかし、仙台から近距離にある、という点と地元の農村と観光客の接点をつくりあげることによって、徐々に人気が出始め、町営のリゾート施設の財務状況も良好である。それは身の丈にあったリゾート政策が、人々に受け入れられたことの証左であろう。
 リゾートはコンビニエンス・ストアではない。それぞれのリゾートに人々は、異なる想い、期待を抱いて訪れるのである。その想い、期待を深く考察せずに、パック的な開発をしてしまった会津フレッシュリゾートの中核的施設「アルツ磐梯」の運営会社の倒産は、たいへんに悔やまれる。せめて、この失敗を糧に、人々が望む等身大のリゾートを我が国において定着させることが出来ればと願う。

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