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ジェネシスのザ・ウェイ・ウィ・ウォーク [ロック音楽]

ジェネシスのザ・ウェイ・ウィ・ウォークのDVDを今更ながら購入して鑑賞する。これは1992年のライブ映像だから何と15年も前のものである。私が最も愛してきたロック・グループはジェネシスである。しかし、その好きなジェネシスはデビューから1980年のデューク発表のジェネシスまでであった。1981年に発表されたアバカブは、Me and Sarah JaneやDodoなど比較的私のジェネシス愛を満足させる曲がないわけではなかったが、初めて納得できない曲が入っているアルバム(それ以前のジェネシスは全ての曲を愛してやまなかった)になった。ショックだった。高校三年の時だったかと思う。1982年に出されたスリー・サイド・ライブという人を小馬鹿にしたようなライブアルバムは、しかし、今考えるとそれなりのクオリティをまだ維持できたかと思う。ただ、束の間の安心も、次作ママで吹っ飛んだ。このアルバムは、初めて私的には本当にどうでもいいアルバムとなったのである。もちろん、他のバンドと比べればママとかザッツ・オールなどは名曲だとは思う。しかし、それまでは私にとってジェネシスは特別なバンドだったのである。それが、まあ普通のまあ楽曲がいいバンドへと堕ちてしまったのである。その頃は、もう一人の私が敬愛していたミュージシャンであったブルース・スプリングスティーンもダンシング・イン・ザ・ダークなどという下らない曲を歌って私を失望させたし、ピンク・フロイドもロジャー・ウォーターズが脱退し、そのくせに残りのメンバーがピンク・フロイドの名前を使ったりしてまったくつまらないアルバムを出し、それをまた巷のエセプログレファンが有り難がっていたりして、踏んだり蹴ったりの時期であった。その後、ジェネシスはインビジブル・タッチやウィ・キャント・ダンスといった私的にはどうでもいいアルバムを発表していったのだが、私の嫌悪が高まるのと反比例して、世の中ではどんどんと受け入れられ、前者は世界的に大ヒットした。そして、私はジェネシスと袂を分かったのである。

それから25年以上経った。私も不惑の年を迎え、踏んだり蹴ったりの人生を積み重ね、研究室を持つ身となり、昔と比べてゆっくりと音楽を聴く時間も増えた。ということで、何か昔別れた恋人がその後、どうしたのか気になるような気分になり、ジェネシスがウィ・キャント・ダンスを発表した後に行ったライブのDVDを購入したのである。なんと8800円であった。

さてさて、その印象はアメリカのスタジオ・ミュージシャンを集めてつくったバンドであるトトのイギリス版であった。もちろん、トトよりはずっと音楽性は高いし、楽曲も素晴らしいし、遙かに知性が感じられる。しかし、なんかトトのような印象を受けてしまった。まさか、ジェネシスを聞いてトトを彷彿するとは思わなかった。残念である。昔はあんなに魅力的な女性だったのに。何があったんだ、という感じである。というのは、今でも私的に最高のライブ・アルバムはジェネシスが1977年に発表したセコンド・アウトであるからだ。これは、本当にロック史上燦然と輝く奇跡の名盤である。あのライブ・アルバムをつくったバンドが、たかだか15年でどうして、こんなに格好悪くなってしまったんだろう。しかし、格好悪くなったのに人々に受け入れられたのは何故なのか。私には分からないことが多すぎる。特に最初の2曲は駄作でトトし過ぎている。3曲目のドライビング・ザ・ラスト・スパイクはジェネシスでなければ、結構いい曲だと実は思ったであろう。ここで、トトではないバンドがプレイしていることに気付く。さて4曲目は、フィル・コリンズがとってもとっても古い曲をやるといって、ダンス・オン・ボルケーノ、眩惑のブロードウェイ、ミュージカル・ボックス、ファース・オブ・フィフス、アイ・ノー・ファット・アイ・ライクなどのメドレーをするのだが、これらは私のもう本当に愛してやまない曲の数々である。しかし、アレンジ的にはセコンド・アウトに比べても相当雑で、パッチワーク的なものになってしまい残念であった。勿論、私がライブに行き、このメドレーを聴けたら興奮するし、感動もするだろうが、それならしっかりとやってもらえたらと思わずにはいられない。このメドレーを聴くと、ああ本当に年を取るのは嫌だなあ、と思わされてしまう。それ以降は、まあ良質ないわゆるアダルト・オリエンテッド・ロックですな。ボズ・スキャッグスとか聴いている人でもハッピーでしょう。なんか、適当にいい給料を貰って、いいスーツを着て、上品な彼女とカップルでコンサートに来るような人を満足させるようなバンドに成り下がってしまっている。まあ、知ってはいたけど改めて残念無念である。昔、ピーターが辞めた直後のジェネシスのライブの映像をみたことがあるが、観客はほとんどがむさいロック青年であった。それに対して、このライブはドームが会場であったが、なんかみんな大卒の綺麗な人達のような感じで女性も多く、ピーターの美しくも狂気の妖しさがあった危ない雰囲気や、圧倒的なテクの凄さで素晴らしく密度の濃い音空間をつくりあげることもなくなってしまい、まあつまんないね。とは文句を言ってもドミノとかは、金を払ってもいい曲だとは思うけれども。あと最後のターン・イット・アゲインはまあ唯一といっていい私を救ってくれる曲である。しかし、この曲もデュークのアルバムの中ではむしろ好きではない曲だったのであるが。

ということでジェネシスのザ・ウェイ・ウィ・ウォークを聴いてつくづく思わされるのは、我々の周囲は常に変化し続けていくということで、その瞬間、瞬間や人との出会いを大切にしないといけないということである。時は過ぎ去ると二度と戻らない。命短し恋せよ乙女である。ということを不惑の年を過ぎて気付く自分も情けない。


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