SSブログ

サンタフェの温泉旅館「萬波」 [都市デザイン]

チェスター・リーブス氏とサンタフェ周辺をドライブをした。ヒッピーがゴーストタウンに住み着いた街マドリッド、未だに20世紀初頭の西部の風情を残したセリーロといったサンタフェ中心の大変興味深い集落に連れて行ってもらい、私のようなランドスケープ研究者には至福の時間を過ごすことができた。暗くなってきて、もうそろそろアルバカーキーの宿に戻ろうという時、チェスターが「もう一つ、お前が絶対興味を持つと思うところに連れて行ってあげよう」と言って、行ったのがサンタフェの郊外の山中にある温泉旅館「萬波」であった。

それは、日本の高級な温泉旅館にそっくりで、私はまず日本の資本が絶対入っているだろうとチェスターに言った。そう思わせるほど、その旅館までのアプローチのつくりなど、移動する空間の演出などが日本庭園のそれに似ていたからである。その背景には、アメリカ人の物真似でここまで日本を模倣することはできないだろうという私の偏見があったのは言うまでもない。

しかし、ここは正真正銘日本贔屓のアメリカ人が25年前に小さな温泉場をつくったのを始めに、以後増築に増築を重ねて現在のような形にしたことを知った。日本の投資はまったく入っていないとのことである。驚きである。私は、リゾート施設計画論という講義を某大学で持っており、そこではリゾート産業は日本最弱の産業であるが、温泉旅館は国際競争力を持っている筈であると話しているので、サンタフェの温泉旅館の存在、そしてそれが非常に流行っているということは、この温泉旅館というコンテンツがスシのように世界的に受け入れる可能性があることを示唆しているようで大変面白かった。リーブス氏に御礼を言うと、「お前は気に入ると思っていたよ」と嬉しそうに笑ってくれた。

ということだが、実はこの温泉旅館「萬波」、温泉ではなくてボイラーでお湯を沸かしているらしい。ということで、正確にはお洒落な宿付銭湯ということになるのだが、まあ、そのアメリカ人がほとんど気にしない欠点を差し引いても、このようなスタイルのレクリエーション施設がアメリカ人に受け入れられているという事実は、一考に値する。


nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0