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フィニックス [都市デザイン]

フィニックスを訪れる。といっても朝の飛行機に乗るために空港そばのホテルに一泊するだけのことなのだが。フィニックスは10年ぶりである。10年前もとんでもない都市だな、と思っていたのだが、さらに酷い状況になっていた。この都市やラスベガスは人類の悪夢である。フランク・ロイド・ライトのブロードエーカー・シティにインスパイアされた、この砂漠という資源が不足している土地に広大な低密度なエネルギー大量消費型の都市をつくってしまうアメリカの無節操さと欲望の大きさと無責任さに大いなる絶望を感じさせられる。それは、人類がこの後、永続的にこの社会システムを維持することは不可能であろうと確信させる絶望である。

この10年の間に、フィニックスはプロ野球チームのフランチャイズを持つようになった。プロ野球チームを持つことは、大都市的生活を享受できる条件であることと、シビック・プライドをくすぐられるために、アメリカ人は非常に重要視している。ということで、アリゾナ・ダイヤモンドバックスの試合が丁度行われていたので、ついでに見に行った。成績が悪く、もう9月に入りペナントレースの行く末も見えてきていたにも関わらず、さらに相手が勝率5割あるかどうかの不人気チームのミルウォーキー・ブリュワースであるにも関わらず2万人以上入っていたのは驚きであった。よほど他に楽しむことがないのだろうか?というのは穿った見方であり、フィニックスはロスアンジェルスのような人工的なレジャーやレクリエーションは充実している。リタイアの金持ちを東北部から惹き付けるためには、それはマーケティング的にも不可欠な条件であるからだ。それは第二次世界大戦後からロスアンジェルスが中部の農民を惹き付けるためにやってきたことと類似している。

そういうことと関係しているのかどうか分からないが、フィニックスの人達は、30年前のロスアンジェルスの人達と人種構成とかが似ているような気がする。アングロサクソン系の白人が多く、次いでヒスパニックが目立つ。アフリカ系アメリカ人はそれほど多くなく、アジア人もそれほど目立たない。今のロスアンジェルスは都心からだけでなく郊外からもアングロサクソン系白人が流出してしまい、アジア系がやたら目立つ都市になってしまったが、30年前はそれほどではなかった。アジア系はガーデナやモントレー・パークといった都市に局所的に集中していただけであり、最近では中華系が多いことからチャン・マリノと揶揄されるようになったサン・マリノにもアジア系といえば日系の銀行の駐在員の支店長クラスの家族のみが住めるような状況であった。なぜ、私がこんなに詳しいかというと30年前にロスアンジェルスで暮らしていたからである。1970年代のロスアンジェルスのライフスタイルは享楽的で、大量消費・大量廃棄が心ゆくまで満喫できるものであった。イーグルスがホテルカリフォルニアを発表し、カリフォルニアにはもはや夢はないと宣告するには、まだ少し時間があった時期である。麻薬などの問題は、まだマージナルであった。アングロサクソン系の白人と裕福なユダヤ系白人が7割を占め、成功した中華系を中心としたアジア系とヒスパニック系が残りを占めるような富裕層の子供が通う(アフリカ系アメリカ人は学年に2人いるかいないかであった)郊外の小学校に通っていた我々にはロスアンジェルスの将来はバラ色に輝いていた。ちなみに、麻薬を高校などに持ち込んだ最初のジェネレーションは私の同期生であり、多くの同級生が、麻薬のディーラーになり捕まり、場合によっては刑務所にぶち込まれた。

話を戻すと、アリゾナ・ダイヤモンドバックスの試合を見に来た人達は、この30年前のロスアンジェルスの雰囲気を発散させていたのである。それは、アングロサクソン系のパラダイスを具体化させた都市のみが放つ独特の雰囲気である。そして、その雰囲気に懐かしさを覚えると同時に、どうにも不愉快な気持ちにもさせられたのである。それは、処女地をみつけては自分達の物質主義的欲望を満たすだけの都市をつくりあげ、それがヨソ者に侵食されたり、いろいろと不経済が生じたりすると、そこを無責任に放棄して、また新たな処女地をみつけ投資するという、アングロサクソン系がアメリカの土地そして風土に対して行ったレイプ的活動が未だ続いていることを示唆していたからである。もちろん、その過程で邪魔になったアメリカ・インディアンを抹殺するなどの暴虐を繰り返したことは言うまでもない。西へ西へと行進してきたアングロサクソン系の欲望は、太平洋にぶつかり、一部は太平洋を越えるが、庶民レベルでは、また東へ戻り、フィニックスやラスベガス、ソルトレーク・シティやボイジへと向かうのであった。しかし、それらの多くの都市や地域は水資源に乏しく、また気候は厳しく、夏はエアコンなしでは生活することは不可能に近い。例えば、フィニックスのアリゾナ・ダイヤモンドバックスのホームグランドはエアコン付の屋内球場である。エアコンかけてまでして、プロ野球をするな!というのが私の見解なのである。フィニックスやラスベガスに来ると、本当にアメリカの文化、価値観が我々人類を滅ぼすことになるであろうと思わされ、非常に陰鬱な気分になるのであった。


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