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ヤン・ゲールのモダニズム批判 [都市デザイン]

ヤン・ゲールの講演の内容であるが、モダニズムの批判が強かった。ブラジリアを強烈に批判していた。飛行機の視点からみると素晴らしいが、人の視点からみると最低だと述べていた。ヤン・ゲールも自分がモダニズムが嫌いであると明言していた。モダニズムの欠陥は「人への配慮への決別」であると述べていた。そして、自動車の普及によって、ヒューマン・スケールから空間が逸脱していると述べていた。都市の移動速度は毎時5キロメートルであったのが、毎時60キロメートルにまでなってしまった。
 ヤン・ゲールは1960年には人を主体とした空間の質に関しての知識は何ももっていなかった。最初にこれに警鐘を鳴らしたのはジェイン・ジェイコブスであると述べていた。オフィスとかで机に向かって、どうやって人々が活動するかを考えるより、人を観察する方がずっと人にとって意味のある空間が造れると述べていた。
 まあ、これは何も建築家だけの問題ではない。私の前任校では、大学のカリキュラムを作成する時、ハーバード大学と東京大学のカリキュラムを参考にしようとした先生が二人いたからね。偏差値50の大学で!実際に学生をみたら、そんなカリキュラムは百害あって一利なしということが分かる筈なのに、そういうことをしない。まあ、建築家だけではない専門家バカという問題かとも思うが。
 閑話休題。優れた公共空間としては、安全、快適、楽しみ、という条件を満たすことが何よりも重要であるとのことである。そして、シエナのカンポ広場を絶賛していた。まあ、確かに滅茶苦茶素晴らしい広場ではあるが、私はゴスラーのマルクト広場もそれに負けずに劣らず好きだが。
興味深かったのは、彼が最も重要な役割を果たしてブロードウェイの歩行者天国プロジェクトであるが、あれは酷すぎると述べていた。キャンプグランドとマラケッシュ、お祭りがごちゃごちゃになったような状況になっており、あれは撤去されるべきであると述べていた。この発言は私だけでなく、他の聴衆も驚いていた。
 40年間、ヤン・ゲールは研究をして本を書いてきたが、それによって人々のマインドセットを変えることに成功できたかなと述べていた。個人的にはちょっと背中を後押しされたような気分にもなる。もちろん、環境デザイン研究学会で、調査をする人達ばかりが集まった学会ということはあるかもしれない。
 全般的に、彼が志向しているのはHumanistic City Planningという言葉でまとめられるような印象を受けた。そして、都市はもっと「人のための空間が必要」ということである。下北沢みたいな道路整備を進めていると、都市は窒息してしまう。本当にそういうことを東京都は進めていく覚悟があるのだろうか、というようなことを考えさせられた。

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