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『7つの会議』 [映画批評]

人気サラリーマン小説家である池井戸潤の著書を映画化した作品。主演に狂言師の野村萬斎。基本、『半沢直樹』と相当内容的にも被る作品であり、出演者も香川照之、及川光博、片岡愛之助、とおなじみの顔ぶれである。話は、正直『半沢直樹』の方が楽しい。あと、野村萬斎は狂言師としては才能溢れているのかもしれないが、映画俳優としては、あまりにも演技が大袈裟で鼻につく。あんなサラリーマンいないからリアリティがむしろ遠のいてしまい、観ていて引いてしまう。
 ただ、私も15年間ほどサラリーマンをやっていたことがあるので、結構、身につまされるところもあって、観ているといろいろと考えさせられる。結局、組織を守るためにトカゲの尻尾切りのように社員を捨てていくというのは、この映画ほどドラマチックではないかもしれないが、似たようなことは起きている。映画の最後のシーンで野村萬斎が、日本のサラリーマンはサムライのDNAを引いているというような意見を述べるのだが、これはそうかもしれないなと考えさせられた。確かに、「お家」や「藩」を守るために個を犠牲にする、というのは現在のサラリーマンにも通じるところである。皆、会社にご奉公しているような気分になっているんだろうなあ。企業戦士という言葉もあったし。
 会社員をしていた頃、「会社のために貢献しないとダメだ」とか「それは会社のためにならない」、「会社の利益を求めなくちゃ」などと口うるさく主張していた後輩の社員がいた。私は、彼の発言を聞いていた「会社って何?」と思いましたね。「会社」は法人格を持っているけど、実際は見えたり、触れたりもしない、組織の共同幻想である。まあ、そんなことを言い始めたら国も共同幻想ですけどね。この共同幻想を維持するために、命を削るような必要はないと思うけど、逆に言うと、この共同幻想によって生活できたり、生き延びたりすることができている。すなわち、生活できたり、生き延びたりすることを保証してくれる限りにおいて貴重な時間をそれに捧げる価値があるけど、それが牙を剥いたらさっさと止めるべきであると思う。会社を選択する機会はあるのだし、自分が会社をつくることもできるのだから。そうそう、この愛社精神の塊のような後輩は、その後、出世ラインから外れて窓際的な仕事をさせられている。愛社精神があって、しかしそれを周りに押し付けるようなことをしていても、会社は成果が出ないと、必ずしも報いてくれないものである。
 ちなみに私は二回転職したが、二回とも転職して生活の質は上がった。ポイントは、嫌になったら辞められるように実力をつけておくこと。そのためにも、若い時に自分に投資することではないだろうか。そして、投資とは勉強をすることである。また、サラリーマンには本当、向き不向きがあって、向いてない人には辛い仕事であるということだ。これがなかなか学生は分かっていない。映画のヒロインが感じたような「虚しい会社人生」を送らないためにも、もっと滅私奉公的なサラリーマンではない、組織の歯車にならないような仕事や就業環境を探すべきであるかなと思ったりする。

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