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伊根町を訪れる [サステイナブルな問題]

伊根町という自治体を訪れる。交通の便が悪いので京都でレンタカーをして訪れた。京都府の北、丹後半島の東にある伊根湾を囲むように伊根町がある。1945年に四村が合併して発足した自治体である。産業は観光業と漁業が中心である。伊根町には5つの漁港がある。ぶりが採れるが、カニはあまり採れないようだ。岩ガキや水産加工品(へしこ・ぶりのみそ漬け)などが特産品である。
 伊根町といえば舟宿である。ここでいう舟宿は江戸時代の江戸や大坂などにあったものとは違い、伊根湾に面して建つ家屋のことを指し、その家屋の下に船を係留することもできる。そして、この湾に面した家は住まいとして使われず、その家屋と道路を挟んだ向こう側にセットとしての住宅の建物がつくられている。海から望む舟宿は大変、風情があり、またピクチャレスクでもあるので、コロナウィルスが流行る以前はインスタ映えする風景からSNSの口コミによって主に台湾人の観光先として人気を博したそうだ。2005年には漁村としてはじめての重要伝統的建造物としての指定を受けている。
 観光客の推移をみると伝建指定によって観光客が増えたという訳ではなく、大きく影響を与えたのはNHKの連ドラ「ええにょぼ」の舞台となった1993年、そして国道178号が開通して、自動車での交通の便が大分改善された2007年だそうだ。

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 伊根町は人口が随分と減少している。合併直後の1947年は7611人あった人口は1950年にピークを迎えた後、一貫して減少し、2021年2月の推計人口は1860人である。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば2040年には人口は1115人になる。人口ピラミッドをみるとまさに逆ピラミッドのような形状をしており、これから自然減による人口減少が進むことが予測される。
社会増減をみると、ほぼ毎年、転出が転入を上回っているが2010年は同数であった。社会増減を年齢階級別にみると15〜19歳で大幅な転出超過となっている。これは町内に高校がないことが大きな要因である。20〜24歳では転入増であり、15〜19歳で転出した層が戻ってきていることが推察されるが、その割合はそれほど高くなく、中学・高校で町を転出したものがそのまま帰郷しないというパターンが多くあると考えられる。
 合計特殊出生率(2008〜2012)をみると、伊根町を含む丹後管内は1.73と京都府全体(1.27)に比べてはるかに高い。伊根町は1.51と京都府よりは高いのだが、周辺地域と比べると低いという状況にある。その要因の一つとして、京都府に比べると低い未婚率が上げられる。
 伊根町の人口ビジョンでは、人口減少によって大きく3つの課題に直面するとことを指摘している。一つ目は「地域の産業における人材の不足」であり、地域産業の担い手が減少し、経営の継続が難しくなったり、それによって経済の低迷が懸念されている。二つ目は「地域ストックの維持管理・更新等への影響」であり、地域の空き家が増加すること、集落の機能低下・喪失などが懸念されている。そして三つ目は「社会保障等の財政需要、税制等の増減による地方公共団体の財政状況への影響」である。
このようなマクロな課題を伊根町は指摘しているが、実際の生活現場から伊根町の大きな課題をみると、それは買物での不便さある。コンビニエンス・ストアや主要スーパーの出店がない。最近まであったA-COOPも閉店した。移動販売がされているが、買物環境は以前より悪化している。これは以前あった個人商店がなくなっているからである。医療サービスに関してはは町内に二つの診療所があり、それほど不便ではないそうだ。公共交通に関しては、コミュニティ・バスは運行はしている。あと、国道が開通したことで宮津市や与謝野町に行くのは便利にはなっている。
しかし、一方でこの国道ができたことが契機で、まちなかの個人商店がなくなったり、周辺への移転が増えているのではないかと推察したりもする。というのは、国道ができたことで車で宮津市や与謝野町の商圏に伊根町も組み入れられたからである。さらに、転出先で与謝野町が増えているのは、国道ができたことでむしろ伊根町に戻りやすくなったということが背景にあるのではないか。これは、一般的には逆、つまり国道で宮津市へのアクセス時間が短くなれば、伊根町に住んで高校に通ったり、宮津市の会社に通勤する人が増えるのではないかと期待されたりするが、実際は親の住む伊根町の自宅に週末に戻れたりするので気楽に伊根町を後にすることを促したりする。
 与謝野町は新しい分譲住宅がつくられているし、スーパーマーケットでも二桁以上ある。そして隣町の宮津市もすぐアクセスできる。鉄道駅もあれば高速自動車道路のインターチェンジもある。パチンコ屋もあるなどレジャーも充実している。そして、何より高校への通学が便利である。伊根町の中学生が進学を考える高校は宮津高校である。宮津高校に伊根町から行くと、通学定期は一学期10万円もした。今では安くなっているが、それでも3万円はする。与謝野町だったら自転車で無料で通える。さらに通学時間が短くて済む。国道が開通したことで、むしろ与謝野町と伊根町が近くなったことが、伊根町から同町への流出を加速化しているということがあるのではないか。逆にいえば、与謝野町から伊根町へ転出する必要性のようなものは減っているかと思う。このようなストロー効果的なことは、地方において道路を整備するときは強く意識した方がいいかと思う。その是非を問う前に、そういうことが生じるということを自覚していくことは必要であろう。
 さて、しかし伊根町の町長は、どうも人口縮小に対しては泰然自若と構えているらしく、「田舎の人口が増える訳がない。いかに減り具合を緩やかにするかが大事」と考えているらしい(役場での取材結果)。そして、「ある程度まで減れば止まる」とも言っているそうだ。まあ、確かにこの素晴らしい伊根町の舟宿をみると、ここがゴーストタウンになることはあり得ないなと思ったりもする。確かに、これらの舟宿を別荘や宿泊施設にしたがるニーズは相当、高いらしく、先日もマレーシア在住の日本人が「5000万円で買えないか」と問い合わせをしてきたらしい。ただ、空き家でも売却どころか貸すのも嫌がる人が多いのと、よそ者を受け入れにくい風土があるらしく、そういった面で持ち主が変わるということはあまりみられていないそうだ。
 

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