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『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』 [書評]

なんかタイトルだけに惹かれてキンドルで一巻目を購入して読んだら、久々に嵌まった。絵があまり上手くなく、著者の名前も「マキヒロチ」だったのでてっきり男性かと思ったら女性であった。道理で、不動産を探しに来る人がほとんどが女性だったのか。この漫画は、相当、東京という都市の根源的な魅力を表現できていると思われる。それは、生活環境の器としての都市の魅力であり、すなわちネイバーフッドの魅力である。これは、モータリゼーションやイオンに阿ってしまった地方と東京との最も大きな豊かさの格差になってしまっている。東京と地方での格差は経済的な豊かさではなく、この消費生活の豊かさが最も大きいと私は分析をしているのだが、この地方にはなくなりつつしかし、このネイバーフッドの東京の魅力は、外部の人には分からない。いや、外部の人という言い方はちょっと下品だが、東京人も自分のライフヒストリーで関係したネイバーフッドぐらいしか魅力をしっていないので、そんなに差別化することはできない。以前、ハイライフ研究所にスポンサーになってもらい、調査研究をしたことがある。
https://www.hilife.or.jp/13490/

大学院の学生を中心とした研究チームを組み、蒲田、千住、三軒茶屋、十条、赤羽などを訪れて「その街の魅力」を探るということをしたのだが、なんかこの研究とこの本が捉える「魅力」が重複する。そして、この本には東京の魅力は吉祥寺だけじゃないだろう、という主張と吉祥寺の魅力がどんどんなくなって大丈夫なのかよ!という二つの主張があるかと思う。両方ともとても共感する。吉祥寺はやはり、相当楽しい街かと思うが、そのローカルの良さがどんどん希薄化している。吉祥寺はハーモニカ横丁の周辺の土地をお寺が所有しているので、それが市場経済による「街の破壊」を防いでいるという側面があるが、それでも、その周辺は市場経済が席巻していて、なんか独自のよさがなくなっている。そして、このような企業による投資活動があまり展開されていない東京のネイバーフッドは、このローカル性が生み出す吉祥寺的な魅力に溢れている。視点によっては吉祥寺より、面白いところがある。個人のテイストによっては、吉祥寺より楽しい、少なくともコスパが高いところは東京にはたくさんある。

結構、うむうむ、と納得したのは砂町銀座や十条、蒲田、雑司ヶ谷。ほとんどの街を知っていたが、この本で指摘されて「ほうっ」と思ったのが福生と野方。この二つの街は時間をつくっていかなくてはと思ったりする。まだ、連載は終わっていないので今後、期待するのは、立石、戸越銀座、学芸大学、駒込、江古田、常盤台、中野新橋とかかな。それにしても、なかなかこういう日常的な視点での東京の魅力はあまり語られていなかったかと思う。そういう意味では、それを見事、テキスト化した本であると思われる。


吉祥寺だけが住みたい街ですか? コミック 1-6巻セット

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  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: コミック



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