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「大衆化する大学」 [書評]

 岩波書店から刊行されている「大学」のシリーズ7巻ものの2巻。「大衆化する大学」をテーマに序論と6つの論文とから構成されている。学生、そして大学教育、大学院といった大学が包含する問題を論じる論文が3編、そして大学をとりまく労働市場、企業の雇用姿勢など大学の外部環境を論じる論文が2編、さらにはマージナル大学に焦点を当てた論文が1編、紹介されている。このような著者が異なる論文集は、得てして内容が拡散したり、論点が論文によってずれていたりして、返ってそのテーマの理解を遠ざけたりするものがあるが、本書はそれぞれが補完し合うような相乗効果がもたらされており、現在の日本の大学が抱える諸問題を包括的に理解するのには極めて適切なものとなっていると思われる。
 特に興味深い指摘されている点として、日本の大学院進学率が低いことは大学の問題というよりかはその価値を評価しようとしない企業サイドにあるということ、難関大学の方が授業出席率が低いこと、日本の大学の進学率50%は先進国と比べると低いこと、教学改革を難しくしていることは大学教員の「自己愛」にあること、などが挙げられる。大学教員の端くれとしては、大変刺激的な内容に富んでいて勉強になる。


大衆化する大学――学生の多様化をどうみるか (シリーズ 大学 第2巻)

大衆化する大学――学生の多様化をどうみるか (シリーズ 大学 第2巻)

  • 作者: 伊藤 彰浩
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/04/17
  • メディア: 単行本



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