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ボストンの出来たてほやほやのレンタル・サイクル・システムを試してみる [都市デザイン]

ハブウェイという名称のレンタル・サイクル・システムがボストンにて今年の7月28日から開始された。自転車数は600、ステーション数は61である。それによって、自宅もしくはオフィスのそばでちょっと移動するのに自転車を使って、移動ができるという寸法である。さて、ボストンを訪れているので、早速、これを借りてみた。ハブウェイには2タイプがある。一つは年間会員であり、もう一つはその場限りの会員(1日タイプと3日タイプ)である。当然、その場限りの1日会員として、借りることにする。会費は5ドルである。ちなみに、3日用の会員は12ドル。年間会員は85ドル。

支払いは、ステーションの脇にある機械で行う。クレジット・カードが必要で、クレジット・カードの情報で誰が借りているかを管理している。最初に借りる時は、電話番号、郵便番号を聞いてくる。郵便番号はアメリカと日本では桁数が違うのだが、適当な数字を入れても借りることができた。そうすると、暗証番号を印刷した紙が出てくる。この紙には、1,2,3の3つの数字を使った5桁の暗証番号が書かれていて、自転車が収まっている駐輪場の機械の脇に印字されている数字を押すと取り出すことができる。

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(これが支払いをするステーション)

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(支払いステーションは駐輪場に隣接してある)

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(自転車はなぜかカナダ製。こんなぼろ自転車より、日本の自転車を使えばいいのにと思わずにはいられない)

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(スポンサーもついている。なぜかハーバード大学)

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(結構、観光客を中心に人気を博している模様)

自転車を0〜30分以内にステーションに返却するとレンタル料が無料となる。しかし、30分から60分だと2ドル支払うことになり、60分から90分だと6ドル、90分から120分だと14ドルと、借りれば借りるほどこの時間当たりの単価は高くなり、7時間以降から24時間だと100ドルとなる。頻繁に返すことが求められ、これが、このレンタル・サイクルを上手く活用するコツになるのだが、これは意外とうまく使いこなせない人が多く出ると思われる。このシステムをさっと理解することが、このレンタル・サイクルを上手に使いこなすかどうかのポイントとなるであろう。通常のレンタル・サイクルと同じと思って利用すると痛い目にあう。

自転車をレンタルすると同時に101ドルの預かり金が取られる。これは、返却すると戻ってくる。なお、自転車を返却しなかったり、壊したりした場合は1000ドルほどが取られるそうである。クレジット・カードという人質を取れるからこそ成立できるシステムである。クレジット・カードの情報によって、どの自転車が借りられているかを管理センターは認識する。これは一方で、間違って他人がレンタルした自転車を乗ってしまったりすると大いなるトラブルのもとになる。逆も然りである。ちょっと同行者がトラブったので管理センターに電話をしたら、管理センターでは誰が、というかどのクレジット・カードがどの自転車をレンタルしているかをしっかりと認識していた。この管理のためか、また返却時、取り出し時での情報混乱を避けるためか、返却してから2分間は、同じクレジット・カードでレンタルをすることはできない。ちなみに現金で支払うこともできない。この現金では払えず、クレジット・カードでのみ支払うというシステムは、地下鉄の駅の券売機や清涼飲料の自動販売機でもみられる。これは、これらの機械から現金を取ろうとする犯罪者から機械を守ることが理由であるようだが、逆にクレジット・カードが発行できない人達には随分と使い勝手の悪いシステムであると思われる。また、ブラジルのようにカード犯罪が横行すると、このシステムも崩壊しそうである。信用取引のシステムをどの程度、しっかりと維持することができるのかが、アメリカの社会をまわす極めて重要なインフラとなりつつあることが察せられる。

ボストンにこのレンタル・サイクルが出来たことで、観光客としてはアクセスが便利になったのは確かである。とはいえ、以下のような問題点を発見した。

1) 自転車を駐輪場からアンロックするのに、機械から暗号が書かれたレシートのような紙を受け取らなければならないのだが、意外と取るのを忘れやすい。これを取り忘れ、次に支払った人が取り忘れた紙に書かれた暗号を自分のものだと誤解すると、他人が、自分が借りた自転車を乗り回すことになる。この人が、追加料金を取るほど長時間乗ったとすると、請求が自分に来る。最悪、その人が自転車を放棄したら、高額の罰金(1000ドル?)が自分のクレジット・カードに請求される。これは、実際、私の仲間内でも生じた。仲間内だと解消できるが、他人だと問題を解消するのは容易ではない。
2) 自転車を返却する時、しっかりと駐輪機械に自転車を差し込まないと、システムが返却したと認識しない。その結果、長時間利用の請求がされる可能性が高い。システムが返却したかどうかは機械の信号が緑に点滅することで分かるのだが、ちょっと返却した後に時間差があるので、急いでいる時は忘れがちである。また、下手に中途半端にすると、返却していると機械が認識していないにも関わらず、機械から自転車が取り出せなくなる。こうなると、もうどうにもならない。私の同行者はこのトラブルに嵌ってしまったが、この事態になると管理センターにて電話で連絡して、情報をしっかりと整理してもらわなくてはならない。そうしないと、後日、莫大な額がクレジット・カードから引き落とされてしまうであろう。これは、英語をあまり話せない観光客には相当な負担とリスクになるので、観光客に利用させるには工夫が必要となるであろう。
3) また、このシステムが稼働してから1ヶ月も経っていないが、ちょっと自転車を維持していく機械などはそのうちすぐ壊れそうな印象を受けた。このメンテをしっかりとやれるかどうかが、このシステムが成功するかどうかの大きな分かれ目になるであろう。
4) ボストンはこの2年間、自転車利用の推進政策を採ってきており、55キロの自転車レーン、そして1600の自転車駐輪場を設置してきたが、実際、街中を走行すると相当、危険である。自転車レーンは、エメラルド・ネックレスの一部であるコモンウエルス道路以外には見つからず、また、歩道を走ると、歩道幅があっても歩行者から怒鳴られる。まあ、歩道走行は日本と同様に法律違反なのでしょうがないが、それではと車道を走ると、恐ろしく危険である。しかも、日本の自動車より、文句というか怒声を浴びせられる。これでは、なかなか利用しにくいし、利用勝手が悪い。何より、自転車文化を定着させることが、ハブウェイが成功にするには不可欠であろう。

 ボストンのメニーノ市長は、7月28日の記念式典にて「自動車はもはやボストンの王様ではない」と言い放った。ほう。そして、ボストンはパリ、モントリオール、ワシントンDCに次いだレンタル・サイクル都市に名を連ねたことになった、と新聞記事は紹介している。しかし、レンタル・サイクル都市は上記より遙かに多い。ミラノ、ブリュッセルやドイツの多くの都市でも導入している。まあ、それはそれでいい。多くの課題を有しているが、ビッグ・ディッグに次ぐ脱自動車の試みとして個人的には高く評価したい。

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