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高尾山に初詣に行き、この山にトンネルは似合わないとつくづく思う [サステイナブルな問題]

高尾山に家族と初詣に行く。京王線沿線(といっても井の頭線だが)に住んでいて、結構、嬉しいのは高尾山が近いということだ。去年も初詣は高尾山であった。あの凛とした冷たい空気に包まれた感じが、厳かさを演出して、まさに聖なる空間という佇まいを有している。明治神宮とか、湯島神社とかにはない貫禄である。さて、三が日の最後に行くのは混雑を避けたいからであるが、三日になっても結構、混んでいてリフトは30分待ちであった。薬王院にて初詣をし、高尾山頂まで登る。山頂からは見事な富士山を望むことができた。こういう素晴らしい富士山の展望を拝んでいると、本当、サブプライムとか不況とか関係なく、自然の営みは続いており、所詮、人間の所業なんてちっぽけなものだと思わせられる。

さて、昨年もそう思ったが、高尾山は外国からの観光客が多い。ミシュランで極めて高い評価を受けたこともきっかけになったのかもしれないが、東京という大都市に隣接して、これだけの自然がある、というのは外国人からすると驚きらしい。私なんかは、ロスアンジェルスの郊外で小学時代を過ごした時、隣の山でウサギを追いかけていたりしたし、サンフランシスコに住んでいた時は、ちょっと足をのばせばミュア・ウッズ国定公園のレッドウッドの森に行けたりしたので、ちょっとそんなに外国人が感心するような大自然とは思えないのだが、ヨーロッパ人からするとそう思われるのかもしれない。まあ、それはともかくとして、高尾山は私も非常に好きな場所であり、東京が世界都市として特別な位置づけを有することができる一つの重要な要件であると捉えている。

さて、高尾山の何がそんなに素晴らしいのか、と考えると、その多様な自然ということは勿論だが、静謐さも挙げられる。森の懐に抱かれた静寂さ。いろいろな自然の営みの音は聞こえるが、人工物の音のない環境。これは、なかなか素晴らしい。心が落ち着いてくるし、安らぎを覚える音環境である。こういう音環境を喧噪あふれる大都会のすぐ近くで体感できる点が素晴らしい。それなのに、この高尾山に高速道路のトンネルをつくる計画がある。現在、どの程度、具体化されているのか不明であるが、結構、つくられそうな状況にあるようだ。この事業がいかに理不尽であるかは、辰濃和男氏の著書『高尾山にトンネルは似合わない』に詳しいが、私もこの高尾山の土手っ腹にトンネルが出来て、自動車の音がこの静寂を破ることは、金銭的価値で測れないほどの大きな損失を東京人は被ると思うのである。そのような損失に対して、得られる便益は大したものではない。本当に、我々は子孫に対して、しっかりとした素晴らしい都市を残してあげたいと考えるが、高尾山でさえ守ることが出来ないかもしれない。そう思うと、新年早々憂鬱な気分になってしまう。


高尾山にトンネルは似合わない―千年の森と高速道路 (岩波ブックレット)

高尾山にトンネルは似合わない―千年の森と高速道路 (岩波ブックレット)

  • 作者: 辰濃 和男
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/01
  • メディア: 単行本



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