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『道路をどうするか』は、有権者必読の良書であると思う [書評]



道路をどうするか (岩波新書)

道路をどうするか (岩波新書)

  • 作者: 五十嵐 敬喜
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 新書



法政大学の五十嵐敬喜先生の新著『道路をどうするか』を読む。これは、有権者必読の良書である。今、この時代に日本に生きる人には是非とも読んでもらいたい。道路が我が国の問題であることに気づいている人は多いと思う。しかし、どこがどう問題であるかは見えにくい。小泉元首相の道路公団民営化が成功したのか、失敗したのか。多くの意見が飛び交い、何がどうなっているのかが分かりにくい。福田首相は道路特定財源を一般財源化するとしたが、結局、首相を放り投げて、その後、どうなったのかは新聞を読んでいてもなかなかフォローできない。本書は、我が国を覆い、そして田中角栄以来多大なる政治的影響力を有していた道路利権に関して、おもに法律の立場から解説しており、非常にわかりやすく、また説得力がある。

道路を捉える視点は私と共有する。例えば「日本は世界に冠たる道路王国」。中央政府や地方政府などは、日本は道路整備が諸外国に比べて遅れている、というように喧伝しているので、「え!本当?」と思われる人も多いかもしれないが、量・質ともに日本はまごう事なき道路王国である。ただし、これは国交省道路局が管理する道路に限定される。日々の生活で利用する街並みを形成する道路や街路といった自治体が管理する道路は諸外国に比べても見劣りする。この見劣りする部分から、まだまだ整備が必要といって、世界一高い高速道路料金や、先進国のほぼすべてが撤廃した道路特定財源というシステムを未だに一般財源に移行しないでいるのである。しかし、これら得られた税金は、この諸外国に比べて見劣りする街路等には投資されない。これを詐欺といわなくて何といえばいいのか。

道路が我が国を滅ぼすといっても過言ではないというのが、本書を読むとよく理解できる。道路が戦後、我が国の巨大な政官財がスクラムを組んでつくりあげた巨大なる怪獣であるということをしっかりと理解したい人、もしくは、そんなバカなと思っている人、どちらの立場の人にも是非とも読んでもらいたい一冊である。最後の章で、何をすればいいのか、といった提案もされている。この提案も非常に真っ当なもので、勉強になる。五十嵐先生が指摘するように、我が国は「このまま道路を中心とした土建国家を続けるのか、福祉政策や教育あるいは少子化対策など国民の生活や人生を優先する社会にするのか、ぎりぎりの選択をする時期がとっくにきている」。この本によって、少しでも日本が崩壊の道に突っ走るのを止める方向に転換してくれることを願ってやまない。
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