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馬路村のパワーに感動する [サステイナブルな問題]

高知県馬路村を訪れる。高知県の東、徳島県境にある山村である。柚子で村おこしに成功した村だ。その昔は営林署が二つあるようなところであった。しかし、杉市場が縮小し、柚子に頼ることになる。しかし、柚子として出荷できるのはごく一部。市場に出荷できない柚子をどうやって処分するか、ということから柚子の搾り汁を販売し始めた。とはいえ、大手食品メーカーの原料として卸しているだけでは生き残れない、という切羽詰まった状況からなんとか一般の客に直接、販売できないか、ということで商品化を考え、地道で長い販売活動を続ける。そのような過程から、ポン酢醤油そしてごっくん馬路村という柚子ジュースなどを開発した。開発主体は農協である。柚子の商品化が成功するまでに15年かかった。馬路村の成功は、一朝一夕では村おこしは出来ない、という考えのもとの地道な努力の賜である。現在、農協での売上げは大体、年間で30億円ぐらいを誇る。ポン酢醤油が売上げの50%程度を占める。
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 この馬路村の柚子商品。当初は営業してもまったく相手にされなかった。したがって、通信販売に活路を求めることにした。これは、相手にされないこともそうだが、たとえ相手にされても、向こうのいろいろな条件を呑まなくてはならない。あまり馬路村にとってはメリットがないと考えたからである。このような通信販売を実践している農協は全国でも珍しいそうだ。
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 実際のシステムだが、農協は農家が持ってきた柚子は買い取りとなる。1キロで170円〜180円で買っているが、利益が出たらさらに60円くらいの額を農家に還元するようにしているそうだ。農協の職員は25名程度。これに加えて、「馬路村ゆずの森加工工場」の職員60名程度が、柚子商品の生産、販売に携わっている。馬路村の農協の職員は全員が馬路村に住んでいる。これは、採用の条件が馬路村に住民票を置けることであるからだ。馬路村は昼間人口が夜間人口より多い、という山村ではちょっと考えにくいほど経済的に活性化している。驚きである。
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 顧客は東京、大阪そして不思議なことに北海道に多いそうである。北海道の理由は、よさこい繋がりではないか、と推測されている。それと、北海道では柚子が採れないので、物珍しいのではないかとも分析しているそうだ。配送に関してだが、宅急便が馬路村まで取りに来ている。昔は安芸市まで持っていったそうであるが、ある程度ビジネスとして成り立つことが宅急便としても分かったので、今は問題ない。輸送代は農協が負担している。
 ごっくんは年間で700万本も出ているそうだ。そのほとんどが通信販売。高知県の店には卸しているが、全国的に展開すると通信販売の顧客が寂しがることと、生産能力が需要に追いつかないためである。卸の注文があっても、卸さないというと、「何で卸さないんだ、意味が分からない」と文句を言われるそうだ。確かに卸せば売上げは増えるが、自分たちのキャパシティー、能力を越えないことがより重要であると考えているそうだ。
 何しろ力を入れたのはコマーシャルだそうである。広告+宣伝費にはかなりお金をかけている。それに加えて催事にも力を入れている。これは売れなかった頃からの伝統となっているが、新しい職員に、お客さんとのやり取りをしっかりと経験させるためにもやらせているそうだ。
 農協が、このような通信販売をする長所としては、生産、加工、販売を一括してやっていることである。これは農協の組合長がすべてをやらないと気が済まないという性格であることとも関係があるそうだ。その結果、ゆずの特性をしっかりと農協が理解しているので、生産者側、顧客側からも信頼されるようになっている。
 馬路村の高齢化率は34.6%。同じ四国の上勝町が48%、群馬県の南牧村が53%であることを考えると相当、若い。人口は1100人弱と相当、少ないがIターン者も14〜15人ほどいて、しかも独身男性、独身女性が多いとのこと。南牧村で山村の将来は暗いなあ、と思った翌週、この馬路村を訪れて、なかなか山村の将来は明るい、と思わされた。
タグ:馬路村
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