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阿佐ヶ谷パール商店街 [都市デザイン]

東京の商店街は世界でも最高クラスのものが多い。昨年、刊行した「脱ファスト風土宣言」(三浦展著)のある章を執筆担当したのだが、タイトルは「日本の商店街は世界のお手本」。その東京の商店街でも、私がなかなか素晴らしいとかねてから評価していたのが、阿佐ヶ谷のパール商店街とそれに続くすずらん商店街の700メートルの商業集積回廊である。しかし、今日、久しぶりにパール商店街を歩いていると、何か違和感を覚える。全然、魅力的な商店街ではなくなっているのだ。もちろん、空間的な変化はアーケードをつけた後からは、ほとんどない。問題は店舗である。お!これは、という商店が非常に少なくなっている。マツモトキヨシやセイジョーといったドラッグストア、ファミリーマート、ドトールやバスキン・ロビンス、オリジン弁当、サンドラッグ、はなまるうどん、焼肉屋も目黒にもある「安安」、ブックオフ、家電のラオックス、そして携帯電話の販売店!。脱ファスト風土の切り札ともいえる東京の商店街と考えていた私であったが、その店舗はどこにでもある全国チェーンにまさに席巻されている。昔は、ピーコックがそこそこ風土性をなくしているので抵抗を感じていたが、今は、ピーコックといった比較的マイナーなチェーンが存在していることがむしろ安堵感を覚えさせるくらいである。

もちろんシュガーローゼなどの名店や、ねじめ正吉の経営する民芸店「ねじめ」などは健在であるし、ぶどうの木は多くのデパートにテナントを持っているが、このパール商店街のが本店なので、他のチェーンとは違って、ここがホームグランドであるといった威厳を放っている。しかし、である。こんなに全国チェーンが営業していたかなあ。5年ぶりぐらいに来たからかもしれないが、まったく阿佐ヶ谷らしい魅力を感じられないつまらない商店街になってしまった。これは、おそらくパール商店街があまりにも集客力があったために、全国チェーンに目をつけられてしまったからであろうが、これじゃ、良さがまったく失われてしまっている。なんか、郊外のショッピングセンターを歩いているような印象を受ける。これは、むしろファスト風土化が進んでいるとも言えよう。商店街で成功し過ぎると、ナショナル・チェーンが進出してきて、結局ファスト風土化するのか。これでは、商店街の将来は真っ暗ではないか!まさか全国チェーンを立地させるために、こんな歩行者専用道路化してアーケードまでつくった訳ではないだろう。地元の商店を育てるような孵化器的機能を持てないなら、杉並区の予算を使う根拠もなくなってしまう。

先日行った、十条銀座商店街や武蔵小山のパル商店街の方が、そういう意味ではるかに面白いし、楽しい。まあ地元の人が使うのだから、いいじゃないか、という意見もあるかもしれないが、こんなブックオフやマツモトキヨシしかないような商店街なら、駅前の西友で私はむしろ買い物を済ませたい。そして、こんなファストフードだらけの商店街に行くぐらいなら、自動車が狭い道を走り、もうまったくもって安全ではない歩行アメニティが最低の新進会商店街に行き、うさぎやのどら焼きでも買うよ。うさぎやは、阿佐ヶ谷の誇りである。私が阿佐ヶ谷に住んだら、うさぎやを誇りに思うであろう。永福町に住んでいる私が、ビストロ木村を愛し、天太呂の天婦羅を愛するが如く、うさぎやのどら焼きや苺餅を愛し、バードランドの鶏を愛するだろう。商店街は、所詮、商店が要である。いかに空間をよくしても、商店が魅力をなくしたら、その商店街も人が離れていくであろう。まあ、ここは難しいところだが、こんな環境になってしまったら、例えばうさぎやとかは、むしろここに立地しないで、新進会商店街のような劣悪な商店街にある方がいいのかもしれない。北口のスターロードの方がよほど楽しい東京の雑踏的空間となっている。いつから、こんなにパール商店街はつまらなくなってしまったのか。それより、昔からこんなもんだったのを私が過大評価していたのか。



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