リウーを待ちながら [書評]
2017年から2018年にかけて連載された漫画の単行本。まるで現在のコロナウィルス禍を予測したかのような展開に驚くが、その元ネタはカミュの「ペスト」。リウーとは、ペストの主人公である医師の名前である。その内容も、「ペスト」でロックダウンされた都市オラン市を、そのまま日本の富士山麓の横走市へ置き換えたような内容であるが、舞台背景は21世紀なので、「ペスト」の物語が現在、起きたらどうなる、という読者の想像力をかき立てるという意味で面白い。「ペスト」に出てくる登場人物を彷彿させる人も多く出てきて、また「ペスト」での科白をそのまましゃべらせたりして、「ペスト」を読んだことのある読者にとってはそれもこの漫画の魅力の一要素となっているであろう。この本を読む前に「ペスト」を読むことをお勧めするし、こちらを先に読んだ場合も後追いで「ペスト」を読むといいかと思う。どちらの本も、そのお互いの世界を理解するうえで役に立つ。
2020-08-30 19:59
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