SSブログ

北沢デザイン会議に出席し、用途地域制の矛盾を知る [都市デザイン]

 世田谷区の下北沢再開発がらみの北沢デザイン会議に出席する。これは、下北沢の小田急線が地下化したことで創出された上部空間をどのように利用するのか、また補助54号線の整備イメージなどについて、世田谷区側と住民とか意見交換をする場である。
 さて、ここで小田急線の上部空間の利用について議論が紛糾した。小田急線の上部空間は大きく、世田谷区と小田急の土地に分類された。そこで、小田急側の土地において、小田急が賃貸住宅を建てたことについて、住民側がその公共性のない土地利用について疑義を呈示したのに対して、世田谷区側がそんなこと言ってもしょうがないだろう、と言い返したので、会場は騒然とした。
 私は、小田急の土地であっても、その土地利用については、世田谷区は指定しているだろうと考え、その土地利用指定を担当者に尋ねたら、しっかりと指定していると回答した。そして「住宅が建てられない用途地域はない」と付け加えた。そうなのである。そもそも用途地域は住宅環境を守るために発展してきたこともあり、住宅以外の用途についての規制はあっても、住宅を建ててはいけないという用途地域は、工業用途ぐらいしかないのである。
 さて、しかし、今回の上部空間は連続立体交差事業で生み出された空間である。これは鉄道事業者の費用負担は10%以下で済む事業であり、9割以上が血税で賄われる事業である。踏切などの社会へのマイナス効果をこれまで周辺住民に押しつけていたことを考えれば、踏切をなくす事業を行うために全体の1割ぐらいを負担するのは当然であろうとも考えられる。そのように考えると、上部空間の土地に賃貸住宅を建てるというのは、あまりにも強欲であるというか、地域住民のことを無視している、と住民が怒るのもよく理解できる。
 とはいえ、そのような事態を生み出していることに対して、世田谷区側にミスがあった訳ではない。それは、用途地域制度がこのような事態に対応できないことが悪いのである。
 そもそも日本には12しか用途地域がない。クリチバ市が40以上あったり、サンフランシスコ市が特徴ある道には、それぞれにゾーニング指定をしたりしているのとは大違いである。しかも、私が指摘しているのは市レベルであるが、日本はこれだけ多様で広大なる国土を有しているのに、一律の用途地域を国が押しつけている。そのような状況が、今回のような小田急線の上部空間をしっかりと都市計画的に規制できない事態を生じてしまい、その結果、多くの住民の憤怒を感じてしまったのである。
 時代遅れで、地域の特性を反映することができないような用途地域制度は早急に改訂することが望まれる。ということを改めて知った北沢デザイン会議であった。

nice!(1) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1