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旭川買物公園を訪れる [都市デザイン]

旭川買物公園を初めて訪れる。旭川買物公園はつくられて今年で40年目になるそうだ。現在、おもに先進国を中心として、世界で歩行者空間化が進んでいるが、日本はそういう流れになっていない。しかし、日本にも旭川の買物公園という歩行者空間が存在していたのである。そういう点で、非常に貴重な歩行者を主体とした公共空間であると思われる。

芝浦工大の中野先生が持っていた1971年から73年の買い物公園の写真を見せてもらったが、当時はコロラド州のボルダー市にあるパール・ストリートのように遊具のようなものまで置いてあった。まさに、買い物と遊びを融合させたような空間であったのだ。しかし、それらもリデザインされて、広場的な空間へと転換された。なかなか、それはそれで悪くはないリデザインかと思われるのだが、いかんせん、利用者が減る一方であるようだ。

その要因は幾つかある。まず、その周辺に住んでいる人が減っている。居住人口密度が減少しているのだ。あと、郊外にイオン・モールが出来た。そして自動車が主要交通手段になることで、都心部へのアクセスが不便になったということも挙げられるであろう。

都市デザイン的な改善点は幾つもあげられる。
1) まず、買物公園は旭川駅前からまっすぐ1キロメートルほど伸びているのだが、駅周辺から離れるにしたがって、歩行者がまばらになっていく。そのためには、駅の反対側にアンカーとなるような集客施設を設置することが必要だ。それによって、動線を強化させることができる。高円寺や阿佐ヶ谷の商店街が元気なのは、中央線と丸ノ内線の駅が二つのアンカーとして機能しているからだ。さすがに公共交通の駅を設けることは難しいかもしれないが、本当はイオンのようなショッピング・モールでもいいから、この反対側に立地することが求められる。イベント会場的なものでもよい。
2) 空間的な点では、ファサード景観の演出が必要だ。現行では、駐車場や空き店舗跡の空き地など、ファサードの連続性さえも確保できていない。駐車場をつくるなとは言わないが、視覚的に駐車場が買物公園の沿道にあるのはよくない。可能であれば商業的な都市活動を沿道に集積させることが望ましいが、そのようなことが難しければ、少なくとも、植栽をするなどしてでも、視覚的にアメニティのある連続性を確保することが求められる。最悪でも、例えば、ドイツのアッシュラースレーベンのように、塀を建ててでも、視覚的な楽しさの演出を確保することが必要であろう。
3) 視覚的な連続性についで重要なのは、沿道の建物と道路との連続性を強化させることである。すなわち、出入りをもっと自由にさせることである。フードテラスという建物がある。視覚的トランスペアレンシーにおいては優れているが、アクセスが少なすぎる。もっと、この買物公園が沿道の建物をはじめとした周辺の路地などと連携させていくことが求められる。もちろん、視覚的にも建物から道路が、そして道路から建物内が見えるような工夫が必要である。
4) 買物公園は延長距離が1キロと長い。負担なく歩ける距離は0.5キロメートルくらいであろう。これを補完するためには徒歩以外の交通手段を提供することである。私が最もお勧めするのはママチャリである。ママチャリを始めとした自転車は買物公園では走行禁止になっているが、すくなくとも4条通りから先はそもそも歩行者数も少ないような状況なので自転車に乗ってでもいいから積極的に通行する人を増やすべきであろう。そのためには、駐輪禁止などという狭い了見も捨てて、しっかりと駐輪する機会とスペースをもっと提供すべきである。さらに、自転車にも乗れない高齢者等のためにはヴェロ自転車のようなサービスを考えるべきであろう。何しろ、この通りの通行者を増やすべきである。
5) 買物公園周辺には飲食店が軒を並べる路地が多い。これらの路地と買物公園とのアクセスを充実させることによって、買物公園単体ではなく、周辺地域の魅力を相乗的に向上させるような工夫が求められる。そのためにはサイン計画などの工夫を現状よりもしっかりとすべきであろう。
6) 買物公園にもう少し、遊び、溜まりの機能を増やしたい。オープン・カフェもそうだが、歩行者数が少ないところであれば、夏には噴水のようなものを設置してもいいであろう。今、両手の巨大彫刻が置かれている場所などは、設置場所として適切であろう。あくまで、この道路は商店街であるから、その商店街の集客を図るためのストリート・ファーニチャーや仕掛け、イベントを積極的に展開させていくことが何しろ求められる。
7) この場所こそ、バーリントンのチャーチストリート・マーケットプレイスのようなBIDを設置して、空間の魅力を高めるためのマネジメント組織をしっかりとつくるべきであろう。

さて、随分とうるさいことを言ったが、それでも、この買物公園という公共空間があるということは旭川という都市の素晴らしい資源である。ほとんどの都市では、改善を提案させるような物、ネタさえ有していない。そういうことを考えると、つくられた当時はまさに「市民運動」と形容されたこの買物公園が存在することは、旭川という都市の格を大いに高めていると言えるであろう。

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(空間の楽しさを演出するストリート・ファーニチャー。1キロメートルにストーリーをつくりあげるようなコンセプトでストリート・ファーニチャーを設置することも考えるといいと思われる)

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