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『東京ディズニーランドの神話学』 [書評]

東京ディズニーランドをテーマとした著書は、能登路雅子のものや有馬哲夫のものがあるが、本書はこれらとは異なる視点から東京ディズニーランドを捉えており、大変興味深い。その異なる視点とは、ディズニーランドが東京の郊外と同様に、西洋(特にアメリカ)に対してのエディプス・コンプレックスによって支持され、日本において「中流イベント」としてその存在感を増していった、というところであり、「郊外のポリティクス」と「ディズニーランドの憧憬」とを並列に位置づけているところである。著者は、驚くほど多方面において造詣が深く、読んでいてその迫力に圧倒されるところもあるが、幾つかの論点においては突っ込みどころが無いわけではない。特に最後の章の「倫理的な基準としての東京ディズニーランド」における分析においては、首を傾げるところがなかった訳ではないが、総じて、日本人と東京ディズニーランドとの関係性を理解するうえでは大変、参考になる図書であると思われる。

最後に私が本書で最も惹きつけられた文章を引用させていただく。著者のこのような大胆不敵なる文章は本書に多く散りばめられており、なかなか刺激的であり、新たな視点を読者に与えてくれると思われる。
「芸術家としてのコルビジェは「事件」であったが、都市計画者としてのコルビジェは悲劇とも言えるほど悲惨な仕事しか残せなかった。「輝く都市」には、「おしゃべり」や「ひとりごと」以上の意味はない。都市について、自然の神秘というアナロジーから抜けきれず、文学的な観念から脱することができなかったように思える」(p.157)
こんな文章、このブログでさえ、私が書いたら、大袋叩きに遭いそうである。しかし、私も言語化することはなかったが、このような印象をコルビジェに対しては常々、思っていた。ちょっと和が意を得たりという気分がしないでもない。


東京ディズニーランドの神話学 (青弓社ライブラリー)

東京ディズニーランドの神話学 (青弓社ライブラリー)

  • 作者: 桂 英史
  • 出版社/メーカー: 青弓社
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 単行本



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