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郊外はこれからどうなる [書評]

本書の「はじめに」で、著者は東浩紀と北田暁大の『東京から考える- 格差・郊外・ナショナリズム』を引き合いに出し、「ところがよく読んでいくと、(東浩紀と北田暁大が)基本的なことを知らずに議論している点が目について、「これで読者が東京を考えた気になられても困るな」とも思いました」と述べ、「東京郊外を考えるための最低限の基礎知識が身につく、入門書を書こうと思ってつくったのが本書です」としている。私も、東浩紀と北田暁大の同書は、北田はともかく東は、基礎的な郊外理解ができていないな、と思っていたので、著者の指摘は非常に納得がいった。そして、実際、本書の内容は、最近でこそ「下流社会」の著者として知られているが、雑誌『アクロス』の編集長時代から、現在までに30年近くにも及ぶ郊外研究者としての著者の集大成的な内容となっており、まさに東京郊外の入門書として極めて有益な内容となっている。本書を読んで思うのは、著者の三浦展は類い希なる編集能力の持ち主であるということだ。まあ、20代後半であの伝説的なマーケティング雑誌『アクロス』の編集長となり、「大いなる迷走」、「東京の侵略」といった名著を生み出したことを考えれば、編集能力があるのは当たり前なのであるが、本書は、三浦が三浦自身の郊外研究のキャリア・ヒストリーを見事に編集した内容となっていて、見事にコンパクトに、しかも分かりやすく東京の郊外の変遷が理解できるものとなっている。本書はページ数こそ少ないが、三浦展という郊外研究者そして編集者の凄みが伝わってくる名著であると思われる。


郊外はこれからどうなる? - 東京住宅地開発秘話 (中公新書ラクレ)

郊外はこれからどうなる? - 東京住宅地開発秘話 (中公新書ラクレ)

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/12/09
  • メディア: 新書



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