三浦展の『日本溶解論』 [書評]
タイトルは「日本溶解論」と大上段ではあるが、内容は世代論マーケティング。「下流社会」以降、その統計的分析のいい加減さが指摘される三浦氏ではあるが、そのような揚げ足を取らずに、稀代のマーケット・アナリストとしての三浦氏の分析力だけを期待して読めば、本書はなかなかの良書である。三浦氏の他の本もそうだが、50頁に1度くらいのペースで三浦氏の慧眼にハッとさせられる。このハッとするたびに、まあ本代は回収できたかなと思ったりする。また、本書は三浦展の他の本と同様に、大変読みやすく、そういう点では有り難い。ただし、売れてからの傾向だが、やたらインタビュー調査で頁を稼いだり、また統計分析のいい加減さを指摘されたことが不愉快だったのか、その正当性を延々と記述したりする頁があったりするのはいただけない。そんなことをしなくても、三浦氏の著書の読書は、その見識を高く評価しているだろうし、逆に、そのような揚げ足を取る人達からすれば、それは格好悪い言い訳にしか映らない。何より、ちょっと本を大量生産するための頁稼ぎという印象はぬぐえなくて、それはあまり感心しない。
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