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ブレーメンの自動車不用コミュニティを視察しに行く [都市デザイン]

ブレーメンに行く。ハンザ都市として、自治都市として特異な位置づけを有する。ドイツの自治都市は三つ。ベルリン、ハンブルクとここブレーメンである。自治都市とは州と同格の位置づけを持つ都市であるということ。人口は60万程度なので、ミュンヘンやケルンといったより大きな都市よりも政治的には特権的な位置づけを有している都市である。デュッセルドルフからは特急で2時間40分。

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(ブレーメンの中央駅)

ブレーメンの駅舎は、煉瓦造りでとても風格がある。同程度の人口を擁するデュッセルドルフ、エッセン、ドルトモント、デュイスバーグといったルール地方の都市の駅とは格が違うという印象を受ける。駅舎はその都市の玄関。なんか、これだけでブレーメンに来たことが嬉しくなる。旧市街地は運河とヴェーザー川とに囲まれたところにある。駅からは多少、歩く。さて、旧市街地には世界遺産に指定されている建造物がある。迂闊にも、この建造物が何かは不明であった。大聖堂は立派ではあったが、アーヘンやケルンの大聖堂のような存在感はない。教会は古くて、またステンドガラスも個人的には素晴らしいものだと思ったが、これがそうなのか。市庁舎もあり、これは建造物はルネサンス様式のファサードがお洒落だが、市庁舎は世界遺産ではないだろうと思っていたら、何とこの建物だけにユネスコ世界遺産というプレートがつけられていた。というと、この市庁舎が世界遺産なのか。意外であった。まあ、世界遺産であるかどうかを別にしても、この市庁舎や大聖堂、教会で囲まれるマルクト広場は素晴らしい広場であり、大いに感心する。ブレーメンの音楽隊のろば、にわとり、ねこ、いぬの銅像もあるし、ブレーメンの守り神のローラント像もある。広場には路面電車が通っており、非常にヒューマンな素晴らしい集いの場である。まさに、都市の広場としての要件を多く満たしている空間だ。くるりの佳曲「ブレーメン」のメロディが自然と流れてくる。

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(世界遺産の市庁舎)

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(ブレーメンの音楽隊の銅像)

さて、今回はこの都市を散策することが目的ではなく、ここブレーメンにある自動車不用コミュニティを視察することが目的であった。ブレーメンには自動車不用コミュニティという、自動車を所有しないで生活する人のためのコミュニティが二つあるというのをインターネットで調べた。一つは地図が手に入ったが、もう一つは電車の時間に間に合わずに、地図を手に入れずにやってきたのである。しかし、現地にくればどうにかなるだろうと高をくくっていた。地図が手に入った方は、比較的すぐみつかった。ヴェーザー川を渡り、地図を頼りに歩いていくと、そこにそのコミュニティはあった。建物のスケッチがインターネットに掲示されていたので分かったのだが、なんかただの駐車場のないマンションのようなものであり、確かに駐輪場には多くの自転車があったが、これで自動車不用コミュニティというのはいかがなものか、という感じであった。取材のアポを取ろうと思っていたのだが、ここなら取る必要がないな、とがっかりしてもう一つを探しに行く。

もう一つのコミュニティは2000年のハノーバーの環境博で賞も取っているくらいなので、それなりに面白いだろうと期待したのだが、手にある情報は、「スポーツ施設とヴェーザー湖と緑がすぐそばにあり」という文章と写真だけである。中央駅で購入した地図には、ヴェーザー湖のそばに二つのスポーツ施設が記されている。とりあえず、その一つに路面電車に乗り向かう。さて根拠もなく、どうにか見つけられるのではないかと思っていたが、最初に向かったスポーツ施設の周辺にはそれらしきものがなかった。私が思っていたよりブレーメンは広く、二つ目のスポーツ施設に向かおうかと思ったのだが、疲れたので探すのを止めて、結局帰ることにした。しかし、このぶらぶらとブレーメンの近郊の住宅地を歩き、いくつか発見があった。まず、住宅のデザイン等がデンマークなどと似ていて、私が住んでいるデュッセルドルフやベルリンなどのものと大きく違う点である。デュッセルドルフではほとんど見かけない空色のペンキやピンク色に近い赤色のペンキやオレンジのペンキなどが使われている。冬の日照時間の短さのためなのだろうか、明るい色彩の家が多い。そして、その生活環境のよさに感心した。まず、緑がなにしろ豊かである。それに、アクセスが優れている。歩行環境がしっかりと整備され、さらに自転車のルートまで確保されている。そのうえ、路面電車やバスも走っており、日本の60万クラスの都市と比較しても、公共交通のアクセスは優れているだろう。もちろん、赤字を垂れ流しているうえでの公共交通サービスのよさだが、その結果、都市アメニティははるかに日本より優れたものとなっている。ヴェーザー川の中州は住宅地と公園になっていたが、その緑の多さと自然が保全されていることに驚く。ドイツで生活していると、ある意味では都市サービス産業のレベルの低さや全般的な効率の悪さにストレスが溜まることもあるが、この空間環境の質の高さは素晴らしいことだと思う。我が国も縮小時代を迎えていく中、ドイツのような空間環境の質を求めるような施策を進めていくべきであろう。いつまでも土建国家路線を継続しても、この空間環境の質は得られない。大きく舵を切る時を迎えつつあると思う。

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(歩道、自転車用の空間、路面電車、自動車のための空間と交通モードごとにしっかりと使用空間が確保されている)

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(住宅地内でも同上のことがいえる)

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(使用されるペンキの色が明るいものとなっている)

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(市街地のすぐそばに、豊かな緑が保全されている)
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