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ローテンブルクを訪れ、とても第二次世界大戦で40%が爆破されたとは思えない再現ぶりに驚く [地域興し]

連休なのでローテンブルクを訪れる。ドイツのロマンチック街道と古城街道の結節点であり、ロマンチック街道のハイライトといわれるドイツを代表する観光地である。私は根が捻くれているので、こういういかにも観光地然としたところには赴かない傾向がある。しかし、ドイツ語学校の日本人のクラスメートに、ちょっと変わったところに行き過ぎなんじゃないですか、と指摘され、確かにそれもそうだなと思い、ローテンブルクを訪れることにしたのである。

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(ローテンブルクの美しい街並み)

デュッセルドルフからICE特急(ドイツの新幹線)でヴュルツブルグまで行き、そこからスタイナッハという駅まで特急で移動し、そこからローカル線でローテンブルクまで行く。ローカル線の終点がローテンブルクで、スタイナッハからは3駅目という短い距離であった。ローテンブルクはタウバー川沿いに発達した城郭都市なので、もっと丘陵地にあるかと思っていたのであったが、結構、平坦だったことに驚いた。坂がもっとあるのかと思ったら、全然そんなことはない。フランスのザンクト・パウルのように丘陵に発展した街だと勝手に想像していたのだが、その先入観は間違っていたことを思い知る。

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(丘の上にあるという紹介をされているが、駅からくると平坦な道のりでたどり着く)

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(西側の公園からだと、段丘の上につくられた町だというのは分かる)

さて、ローテンブルクなのだが、旧市街地が観光地となっており、この旧市街地は城壁によって囲まれている。この城壁を通れる箇所が東西南北で4箇所ほどある。これらの入り口には塔がつくられており、この塔がそれぞれランドマークとなって個性を発揮しており興味深い。そして、この塔の下にある門をくぐり抜けることで、日常的な世界から非日常的な中世への世界へとタイプスリップしたような錯覚を覚えさせるような効果がある。あたかもテーマパークの入り口を通り抜けたのと同じような効果がある。そして、ローテンブルクの城壁内はまさにテーマパークのような場所であった。色とりどりの建物と多くの人々が行き交いする華やいだ雰囲気。自動車が入れない広場周辺の街路は、まさに自動車が入れないテーマパークのようなヒューマン・スケール溢れる楽しい空間であった。訪れた日は日曜日であったにも関わらず、多くの店はドイツとは思えないほど営業していた。また、昼食を取ったレストランのサービスもドイツらしからずよかった。味はドイツらしくそれほど美味しくなかったが、しかし、テーマパークだと思うとまったく納得できる。クリスマス博物館や中世犯罪博物館といったテーマパークのアトラクションのような楽しい施設もある一方で、この街の歴史を伺い知ることができる教会等の歴史建造物もある。そして、そこで時間を過ごしていて得られるのは、まさにテーマパークに来ているのと同じような、しっかりとレジャー産業としてのサービスを享受している安心感であった。驚きがない訳ではないが、計算された驚きというか、もうサービス産業三流のドイツにおいては考えられないほどの顧客重視の気持ちのよい体験ができる観光地である。飲食そしてお土産物は量といった点では大変、充実している。さらに日本人が多く訪れているようで、日本語のメニューや日本語の看板も多く目にした。日本食料理屋などもあった。英語も当然のごとく、通じる。ディズニーランドのような観光地であり、そういう点ではプロフェッショナルな意識を感じた。素人による観光地経営といった甘えが一切感じられない。観光業で生きていこうと思ったら、ここまで徹底しなくてはならないのかと感服させられる。日本の自治体など、大した観光資源がないにも関わらず、なけなしの税金を広告代理店や旅行代理店などにマーケティング戦略や広報戦略を立案してもらい、無理矢理、観光地として集客を図るようなことをしていたりするが、そんな甘い姿勢で観光開発などできないなということが、ここローテンブルクに来ると分かる。というのも、ここローテンブルクは第二次世界大戦で市街の40%が破壊されたからだ。しかし、破壊されたにも関わらず、以前のように復元させた。復元させることが相当、困難な事業であったことは想像に難くないが、その困難を克服したことによって、現在のローテンブルクの観光業の繁栄がある。観光客が多くて嫌だ、というような声が地元にあるのかは知らないが、ちょっと訪れただけでは、他に生き残る道はないといったような覚悟のようなものを感じた。こう思うのは、訪れたのが聖霊降臨祭のお祭りと重なったので、地元の人達がこぞって中世の衣装を着ていろいろなパフォーマンスを街中で行っているのを見たからということもあるかもしれない。ドイツというと個人主義というイメージもあるが、こういう祭りや地域のために協働するといった傾向は日本より強いような印象も受ける。

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(門をくぐることでテーマパークのように非日常性が演出できる)

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(ちょうど聖霊降臨祭のお祭りの時に訪れたので、多くのパフォーマンスを観ることができた)

地域を観光開発しようとしたら、地元の資源を活かし、その資源を存続させる努力を継続させる徹底した覚悟が必要なのであろう。そして、地元の協働が不可欠であろう。自分達で知恵を出そうと努力せずに、広告代理店や旅行代理店にアイデアを求めるようなことをしていては、観光を地域産業にすることは相当、困難であることをここローテンブルクを訪れて知った。私はディズニーランドが好きでないので、あまりにも観光地然としたところは本来は好きではないのだが、しかし、観光産業としてのローテンブルクのあり方はまったく批判できない。非常にプロフェッショナルであり、そういう意味では地元の資源を観光に活かしたケースとしては規範になるようなものなのではないか、とちょっと訪れただけではあるが思わされた。私は中学の時、一人で広島の宮島を訪れ、地元の土産物の人達に非常に嫌な思いをさせられたことがある。スタンプがあったので、旅の記念にと押してしまったら、金を払え、馬鹿野郎とどやされたのである。中学生のよくありそうな間違いだと、今だったら思う。その時はスタンプを押してお金を取るといった商売があることを知らなかった。そして、それを説明するのでもなく、お金を払わせることを恫喝して強制したのである。同じ観光地でも、ローテンブルクはそういうことはないだろうという安心感を覚えることができる。ディズニーランドで恫喝して中学生からお金を取るようなことをしないであろうという安心感と同じ気分に浸れる。私は広島の宮島の一件以来、無意識のうちに日本の観光地のお土産屋には近づかなくなったような気がする。そういう体験をしたものとして、日本の観光地がローテンブルクと同じ土俵にのぼるには、長い道のりがあると思うのである。

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(こんな洒落ていないお菓子でも地元銘菓であると、思わず買ってしまう。しかし、これを買うような雰囲気にさせることを町ぐるみで実現させているのがローテンブルク。そこに底流しているのは、ディズニーランドなみのサービス精神である。)

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