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忌野清志郎の訃報にファンでもないのに千々に思いは乱れる [ロック音楽]

 忌野清志郎が他界した。その訃報に接して、いろいろと思う。高校時代、クラスメートの一人が、RCサクセッションの日比谷公会堂のライブを観にいって、翌日、大興奮して、この世に凄いものが出現したということをクラスの皆に宣伝した。相当の興奮状態だったと思う。この彼は、その後プロのミュージシャンを目指し、日本では鳴かず飛ばずであったのだが、韓国でなぜか受けて韓国に移り住んで今でもロック・ミュージシャンをやっている佐藤行衛であった。佐藤行衛の影響で、このクラスの多くはRCサクセッションを聴かされたと思うし、清志郎と出会ったことで彼の人生も大きく転回したのではないかと推察する。
 大学ではバンド・サークルに入ったが、当時、親しくしていた後輩の一人が清志郎命であった。彼はRCサクセッションのコピー・バンドをしていて、清志郎に心酔していた。私も彼から清志郎の素晴らしさを聞かされ、多少、共感するところもあった。当時、彼の影響で「十年ゴム消し」などの清志郎の本なども購入して読んだりしていた。
 とはいえ、個人的には忌野清志郎に特別な感情を抱いたことはないし、生で観たこともない。アルバムは「プリーズ」や「日本の人」、「ラプソディ」は買ったりしたが、他はレンタル・レコードとかで済ませたと思う。RCサクセッションのファンの多くが名曲であるという「雨上がりの夜空に」は、その歌詞の素晴らしさに強烈なインパクトを覚えつつも、メロディーはUFOの「オンリー・ユー・キャン・ロックミー」のパクリじゃないのかと思っていた。一番好きな曲は「トランジスター・ラジオ」で、「彼女 教科書広げているとき ホットなメッセージ 空にとけてた」とか「君の知らないメロディ 聴いたことのないヒット曲」という歌詞は、高校生当時、自分が他人に理解されることの難しさに直面したこともあって、その世界にすっと入っていけた。他にも「スロー・バラード」や「ドカドカうるさいR&Rバンド」などの曲は気に入っていたが、忌野清志郎に対しての愛情の度合いは、BOガンボスなどと同程度かそれ以下であり、後に知ることになる椎名林檎などに比べればはるかに薄いものであった。くるりの方が音楽には愛着がある。その昔、清志郎が清水建設のコマーシャル・ソングを歌っていたのを聴いた時はがっかりしたし(いい曲だとは思ったけど企業に使われているという印象が強かった)、日本生命のコマーシャル・ソングを歌ったりするのを聴いた時もなんだかなあ、という印象を受けたりした。そういうことは、小田和正にやらせておけばいいのにと思ったりしたものだ。
 しかし、そのようにファンでないにも関わらず、忌野清志郎の訃報にはショックを覚える自分がいる。そして、この世には私のような人が多くいるのではないだろうか。ファンではないにも関わらず、亡くなるとショックを受けさせるほどのビッグなカリスマだったのかもしれないと自分の衝撃を通じて分析したりもする。その死因もロック・スターっぽくない。日本人の半分の死因である癌である。そして、彼の魅力を大いに高めた、子煩悩で家族思いであり、いい人であるというおよそロック・スターっぽくない個性が、より彼の死を受け入れたくないという人々の思いを強くさせたのではないかとも思ったりする。これは、ミック・ジャガーのような人非人(個人的には知っているわけではないが)やエルトン・ジョンやポール・マッカートニーなどの俗物的なキャラでは持ち得ないカリスマだと思う(ちなみに私はポール・マッカートニーの才能は敬愛しまくっていて、彼を非難している訳ではない。でも残念ながら俗物であることは疑いようがない)。
 そして、いろいろと苦労もあっただろうが、自分のやりたいコト、表現したいコトを思う存分することができたという彼の生き様に、我々は羨望と尊敬の気持ちを持つのかもしれないと考えたりする。私は、ファンではなかったので、彼の一挙手一投足を追っていた訳ではないので、何も述べる資格はないとは思うのだが、彼の自由人としての生き様や、その愛情溢れる暖かい人柄、そして何よりも納得しないことには妥協しない潔癖さといった彼のイメージが、彼の死を悔やむ気持ちを強くさせるのではないだろうか。
 我々もいつか死を迎える。それまで、清志郎のような高潔なスタイルで日々を過ごしていきたいと不可能だろうなと諦めつつも思う。ファンではない私に対しても、そういう真摯な気持ちを抱かせるということが、清志郎の偉大さなのかもしれない。こういう風に整理すると、清志郎は音楽家としてではなく、そのキャラクターで多くの人々を魅了していたのかもしれない。と書きつつ、今日は「トランジスター・ラジオ」を久しぶりに聴いて涙した。私のようなファンではなかった人間の人生においても、清志郎は足跡を残していたことに気づかされる。そして、その気持ちを共有できる人が周りから消えていることに、随分と寂しい人生を送っていることにも気づかされる。清志郎が多くの人々にカルチャー・ショックを与えたあの日から随分と遠くに来てしまったものだ。


十年ゴム消し

十年ゴム消し

  • 作者: 忌野 清志郎
  • 出版社/メーカー: 六興出版
  • 発売日: 1987/02
  • メディア: 単行本



ラプソディー

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: USMジャパン
  • 発売日: 2005/11/23
  • メディア: CD



PLEASE

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  • 出版社/メーカー: USMジャパン
  • 発売日: 2005/11/23
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日本の人

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: CD



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