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ドイツの田園風景が美しいのは道路が少ないからだ [都市デザイン]

ドイツを鉄道でめぐると、その田園風景の美しさに感心する。ベートーベンの「田園」の美しい調べは、このドイツの風景だから紡ぎ出されたのであって、日本の「田園」風景だったら、山田耕筰が限界なのだろうな、などと考えていた。しかし、なぜ、ドイツの田園風景が美しいのか、ということまではあまり考察していなかった。さて、それを景観構造的に比較すると、重要な違いがあることに気づいた。それは、道路の少なさである。ドイツの田園風景においては道路が非常に目立たない。そもそも、道路自体が少ないが、あったとしてもガードレールなどもなく、極めて地味で景観に溶け込んでいる。そうか、道路が日本の田園景観を阻害しているのか、ということに気づき、その違いに納得する。実際、日本はドイツに比べてはるかに道路が整備されている。

例えば、全道路延長距離は、日本が119万キロメートルに対してドイツは23万キロメートル。国土面積当たり全道路延長は1キロ平米当たり日本が3.2キロメートルに対してドイツは0.7キロメートル。これを可住地でみると、日本が15キロメートルに対してドイツは1キロメートルと15倍も違うのである。都市部や住宅地における道路密度はそれほど変わらないと考えると、日本はドイツの田園地帯に比べて、遙かに道路が通っているということは統計的にも裏付けられているのだが、実際、その景観を比較すると明らかなのである。日本の田園風景は本来的には相当、美しい。埼玉の見沼田圃や、各地の棚田などを訪れるとそれは明らかだ。しかし、そのような美しい田園景観をナイフで切り刻むような効果を与えるのが道路である。しかも、ドイツは柔らかい砂利道だったり、未舗装な道路をみかけたりするが日本の場合はどこもかしこも舗装道路にしようとする。その結果、自然的な農業景観と人口的な道路景観とがぶつかり合い、協調性のない景観が各地に発生するのである。ということをドイツの美しい田園景観を見ていて気づいた。

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(ドイツの美しい田園風景には道路が滅多にみられない)

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(日本の田園風景はファスト風土化してしまっている)


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