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クリスタル・ウォーターで福岡正信の偉大さを改めて知る [サステイナブルな問題]

 オーストラリアを代表するパーマカルチャー村の一つであるクリスタル・ウォーター。ここを計画して創りあげた4人のうちの一人、マックス・リンデガー氏の講義を引率した学生に聴講させている。マックス・リンデガーは拙著『サステイナブルな未来をデザインする知恵』にて、その考えを紹介しているが、このマックス・リンデガーが心の師として敬愛しているのが、日本人の福岡正信である。福岡正信の著書『自然農法わら一本の革命』は、彼にとってバイブルのようなものであると語っていた。福岡正信は、その著書が多くの言語に訳されたり、アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞やインド最高栄誉賞を受賞したりしているなど、海外で非常に高く評価されているにも関わらず、日本では怪しいおじいさんで片付けようとしている人が多く、日本で評価されないが海外で評価されている代表のような人である。
 学生達は当然のごとく、福岡正信を知らなかった。マックスはちょっとショックを受けていたが、むしろ知っている学生がいたら私が驚いた。多くの日本人が知らないか、過小評価しようとしている福岡正信ではあるが、その著書『自然農法わら一本の革命』は凄い本であると思う。それは、農学書ではなく哲学書である。デカルトの批判、相対性理論くそくらえ、といった考え方は、環境問題を考える視座として極めて正当であり、現在に続く世界のエコロジー運動の精神的支柱として彼が位置づけられるのも当然であると思う。また、私が読んだ改訂版は、アメリカの訪問記という章が付け加えられており、アメリカの風土を観察したエッセイのようなものが書かれているのだが、そのあまりにも鋭い観察眼、分析力に衝撃のような感銘を覚える。実際、アメリカの講演で、彼が感じたことを話したようなのだが、アメリカ人の聴衆も相当、ショックを受けたようである。確かに、本で書いたようなアメリカを観察した印象、アメリカは豊かではなく貧しいといったような話、を述べれば、アメリカ人も天啓を得たような感動を覚えることも分からないでもない。アメリカのエコロジー運動に、日本的なものが強い影響を及ぼしたのは、福岡正信の存在が大きかったことをこの章を読むと分かる。
 彼は残念ながら、去年の8月に亡くなった、という話をマックスがした。私は、迂闊にもこの訃報を知らなかったので驚いた。福岡正信に会いたいとは常々、思っていたが、会うことはかなわなかった。『サステイナブルな未来をデザインする知恵』での取材候補ではあったが、超高齢であったことや、ちょっと私ごときが会っていいのか、みたいな気持ちがあったりして、結局かなわなかった。
 しかし、マックス・リンデガーの話を聞いて、改めて、彼の偉大さ、そして彼が世界に蒔いたエコロジーの考え方や生き方の影響の大きさを知り、彼の思想というか、彼のような日本人がいたことを学生達に教える必要性を感じた次第である。また、福岡正信を否定したがる日本人というのも、ちょっと研究対象として興味深い。


自然農法 わら一本の革命

自然農法 わら一本の革命

  • 作者: 福岡 正信
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2004/08
  • メディア: 単行本




サステイナブルな未来をデザインする知恵

サステイナブルな未来をデザインする知恵

  • 作者: 服部 圭郎
  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 2006/04/14
  • メディア: 単行本



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