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ウォルマートを撃退した小さな自治体ヘルキュリース [都市デザイン]

 ヘルキュリースというギリシャ神話のヘラクレスを語源とする名前をもつ都市がサンフランシスコの郊外にある。この都市は人口が2万人程度の小都市で、所得層としては中流が大半であり、人種的には多様で、一般的に白人が多数を占める郊外住宅地と異なり、アジア系アメリカ人が占める割合が最も高い。
 この小都市が2006年5月23日に全米の注目を集めた。それは、ウォルマートが進出しようと購入した市内の17エーカーの土地を強制収容して市有地にすることを市議会の議員が全員一致で採択したからである。
 この市議会の直前に行われた住民投票では、何と97%の住民がウォルマートは不要であると投票したのである。ある住民は反対理由として、ウォルマートが進出した町には、ウォルマート以外の店がすべて潰れて、ウォルマートだけになってしまったところがあるが、そのような事態になるのは後免だ、と述べていた。
 筆者もその後、ヘルキュリースを訪問したのだが、高速道路のインターチェンジに隣接したウォルマートが進出しようとした土地は今でもまったく手つかずの状態であった。しかし、ヘルキュリースには既にホームデポも進出しており、タウンセンターにはウォルマートはないが大きなショッピングセンターが存在していた。いわゆるウォルマート対ダウンタウンの商店街、といった構図は描きにくい。しかし、どうもヘルキュリースは新たにヒューマン・スケールの商店街的なもの、利便性の高い近隣商圏をターゲットとするような店を欲していたようだ。そう思っていた中でのウォルマート進出なので、住民が強く反対した様である(サンフランシスコ・クロニクルの新聞記事などから推察)。
 まあ、イオンに代表されるショッピングセンターを諸手を挙げて歓迎する我が国の自治体には、市場経済が幅を効かせているというイメージの強いアメリカでも、このように大規模商業施設を撃退している例があることを知るといいであろう。

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ウォルマートの開発予定地だった場所
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