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ラドバーン [都市デザイン]

レンタカーでラドバーンに行く。ラドバーンは都市計画を勉強しているものにとっては聖地であるが、そうでないものにとってはただの奇麗な住宅地である。ただの奇麗な住宅地はニュージャージー州にはたくさんある。そして、ラドバーンは自治体ではない。ラドバーンというのは俗称であり、フェアローンという町に属する。したがって、それは、ただの住宅地の名前であるからして、大雑把な地図には載っていない。インターネットで大概の場所は分かっていたので、まずそこに向かう。ニュージャージー州は、道路ネットワークがぐしゃぐしゃで非常に分かりにくい。これは、同じニューヨークの郊外であるロングアイランドでも言えることだと思うのだが、鉄道ネットワークで一度都市構造が形成された後に、モータリゼーションに対応した道路ネットワークをつくろうとしたために、どうしても無理が生じてしまっている印象を受ける。ぐるぐると当てずっぽうに走っていたのだが、見つからない。ガソリンスタンドで詳細な地図を購入し、ようやく到着することができた。

ラドバーンは、歩車分離をはじめて試みた住宅地として都市計画の教科書には必ず紹介されるような有名な事例である。そして、近隣住区論が適用された事例でもある。クラレンス・スタインとヘンリー・ライトによって1929年につくられる。このクラレンス・スタインとヘンリー・ライトは、バークレイの「都市構造」という講義の期末テストの問題に出たことを覚えている。まあ、アメリカの都市計画を学ぶものにとっては非常に基本中の基本といった知識である。ラドバーンはエベネザー・ハワードの田園都市に非常に大きな影響を受けている。土地に関しては共有という考えはなく、また農地等は設けられてなく、田園都市というよりかは、田園郊外とその後、揶揄されるような計画の嚆矢になってしまったという側面もあるが、小学校をコミュニティの中心として位置づけられた住宅計画は、アメニティの高いオープンスペースといった共有地を多く設け、また歩道ネットワークをコミュニティ内に縦横に張り巡らせるなど、豊かな生活を実現させるコミュニティとしての多くのアイデアと知恵が込められている。いわゆるスーパーブロックのコンセプトが導入されており、住宅地を囲む大通りから中に入ると、袋小路の道によって各戸にアクセスできるように設計されている。スーパーブロックは、その内部はともかくとして、その外側との交流を断絶するなどの問題があるという指摘をよく聞いたが、実際、ラドバーンを訪れると、そのスーパーブロックとなる道路も片道2車線もなく、交通量もそれほど多くないため、コミュニティを分断するような効果はさしてないことに気づく。計画面ではすこぶるよくできた住宅街である。コミュニティ内は、コベナントのような住宅協定があり、それによって通常の住宅地より多くの規制を遵守することが住民達には求められる。現在、ここに住む世帯数は670で人口は約3100人ほどである。住宅は戸建住宅が469戸、タウンハウスが48戸、デュープレックス(二家族で戸建住宅を共有するパターン)が30戸、そしてアパートが93戸となっている。ラドバーンは、1974年には国立歴史地区として指定された。ラドバーンに関しては、ハビタット通信4号に記事を掲載する予定ですので、ご参照下さい。


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