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ピーター・ガブリエル在籍時のジェネシスDVDを観る [ロック音楽]

ピーター・ガブリエル在籍時のジェネシスのDVDをお茶の水のディスク・ユニオンで今月初めにみつけ、条件反射で購入して最近観た。これは、「ナイフ」から「眩惑のブロードウェイ」までピーター・ガブリエルのジェネシス在籍期間の貴重なライブ映像、そして音楽評論家のコメントから構成された2枚組DVDであり、嬉しいことに当時の写真を含む96ページに及ぶ豪華解説本がつく。これで確か6000円程度であった。私が高校時代、どうしてもビデオプレイヤーが欲しかったのだが、これは、当時ジェネシスの30分のビデオ・クリップがディスク・ユニオンで売っていており、それが観たくてしょうがなかったからであった。しかも、その価格はなんと18000円であった。これは、家にビデオプレイヤーがやってきて真っ先に買ったのだが、何回も繰り返してテープが磨り減るほど観た。当時の宝物であった。しかし、これはピーターが脱退した後、「セコンド・アウト」を前後しての映像ものであり、ピーター・ガブリエルのジェネシス・ライブの動画は観たことがなく、いつかは観たいと当時強く思っていたものであった。というのは、ピーター・ガブリエルのジェネシス在籍時のパーフォーマンスはとてつもなく凄いという文章を何度も目にしていたし、ジェネシスの写真集をこれまた4000円くらいで当時購入していたのだが、その写真集に収められていたなんともいえない摩訶不思議なライブの模様を動画で観たいと強く願っていたからであった。ただし、当時でさえもう7年〜10年前の出来事である。もはや、そのような動画を観る機会はまずないと諦めていた。当時は、イギリスやアメリカなどのロック・バンドの動画を観ることは大変貴重なことであり、映画館でライブを映像しても集客が図れるような時代であったのである。

それが30年近く経って、まさか6000円程度で手に入れられるとは。どこに転がっていた映像か知らないが、DVDが開発されたおかげだとすれば、何とも有難い話である。解説本も非常にしっかりとした批評が為されており、それだけで私は6000円を払ってもいいと思っているくらいであるが、そのDVDの中身は本当に素晴らしい。ビデオ・クリップではなく、すべてライブの映像と何人かの音楽評論家のコメントとから構成される。音楽評論家のコメントは、通常なら余計なものを入れやがって、といらつく私であるが、ちょっとでもこの時代のジェネシスのことを知りたい私にとっては、貴重な情報であり、ふむふむと感心して拝聴した。ただし、これは2回目はつらいが。

そして、もう何といっても素晴らしいのはピーター・ガブリエルを始めとしたジェネシスのライブ演奏である。ナイフでのピーターの狂気がかったパーフォーマンスのセクシーさは人間とは思えない。そしてリターン・オブ・ジャイアント・ホッグウィード、ファウンテン・オブ・サルマシス、ミュージカル・ボックスといった初期の2つのアルバムにおいて既に確立されていたジェネシス・ワールドの美しくもおどろおどろしい、何ともイギリス的な世界観の演出の凄さ。ピーターの常人を逸したパフォーマーとしての才能と、それをバックアップするメンバーの音楽的力量の高さに30年近く前に受けた感動と同様の新しさで、改めてショックを受ける。さらに嬉しいのは、初期の大傑作であるフォックストロットからウォッチャー・オブ・ザ・スカイとサパーズ・レディのライブを相当の長さ、収録していることである。サパーズ・レディは20分以上の大作であるが、そのエッセンスを見事にDVDに収めている。そして、これは、まさにこのDVDのハイライトである。巨大な花や狐などに化けてライブ・パーフォーマンスをするピーターは鬼気迫る迫力があり、とてつもなく格好いい。これは、ピーターのフロントマンという役割を引き継いだフィル・コリンズがどうもけったいで、歌はうまいが格好悪いというのとは全くもって対象的である。ちなみに、ドラマーに徹していたこの時代のフィル・コリンズは毛もあり、格好がよかった。とはいえ、フィル・コリンズの方針はジェネシスをドーム・バンドの成功へと導き、残念ながら私を大いに落胆させるのである(また、いつか書きたいとは思うが、私的にはジェネシスはスリー・サイド・ライブのアルバムをもってして終焉を迎えている)。

このポール・ホワイトヘッドがアルバム・ジャケットを担当した3枚のアルバム時代のジェネシスを、このDVDは見事に活き活きと押さえている。ただし、その次のセリング・イングランド・バイ・ザ・ポンド、眩惑のブロードウェイ、の映像に関しては物足りないに尽きる。セリング・イングランド・バイ・ザ・ポンドのアルバムからはダンシング・ウィズ・ザ・ムーンリット・ナイトのライブ映像が収められていて、それはそれで素晴らしいのだが、このアルバムの大傑作であるファース・オブ・フィフスやシネマ・ショーの映像がないのは滅茶苦茶残念である。フィル・コリンズのシネマ・ショーのライブは生でも観たことがあるが、ピーターならどうやって演じたのか、本当に観てみたかったので残念だ。そして、眩惑のブロードウェイに関しては、本当に申し訳程度にイン・ザ・ケージのライブ映像がほんのちょっと出てくるだけである。まあ、これらは次回にまた何かしらの作品として公表されるということなのだろうか。このDVDは「Genesis the Gabriel Era」というタイトルなのだが、むしろ最初の3枚だけに特化させた方がファンは納得したのではないだろうか。それにしても、つくづく思うのは、当時、本当に現役だった頃のピーター在籍時のジェネシスをライブで観たかったあ、という悔やみと、DVDによって高校時代にはまりにはまったバンドの秘蔵ライブを目にすることができたという喜びである。

ピーター・ガブリエルはもちろんソロになってからも最も敬愛するミュージシャンであり、多くのインスピレーションをもらっている。彼もジェネシス同様、スレッジハンマーでメジャーなスターになってしまったが、ジェネシスとは違って、メジャー路線でも私の期待を裏切らず今日に至っている。今では、スティングなんかと比べても地球環境問題や平和問題に関して、はるかに真摯で誠実でインテリジェントな意見を述べているピーターだが、まあ若い頃はほとんど狂気がかっていた訳だ。とはいえ、少し前のソロのライブでも「ディギング・イン・ザ・ダート」の内視鏡カメラを使っての演出とかは、やっぱこの人、ちょっと頭変かもと思わせるには十分だったが。まあ、私的にはこのDVD、無人島に持っていくうちの5つのDVDには間違いなく入る、出来れば棺桶にも入れてもらいたい大傑作であった。これを10代の時に見ていたら、人生、違う道を歩んでいたかもしれない。そして、イエス、ピンク・フロイドといった素晴らしいロック・バンドと比べても、個人的にはジェネシスが最も私の感性にぐっときたバンドであった理由を改めて知ることができた。

Gabriel Era (With Book) (2pc) (W/Book) (Eng Dts) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: Classic Rock Legends
  • メディア: DVD

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