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カールスルーエは訪れるたびに都市の魅力が増しているように思われる [都市デザイン]

カールスルーエはドイツのバーデン・ビュッテンベルグ州第三の都市で、その人口は30万人をちょっと越えるぐらいである(2022年)。ドイツの都市としては歴史が浅い。カールスルーエは「カール」の「休息」という意味で、ここでいうカールとはバーデン・ドゥルラハ辺境伯であるカール3世ヴィルヘルムのことである。カール3世ヴィルヘルムは現在のドゥルラハ地区にお城があったが、17世紀末にフランスとの戦争で徹底的に破壊され、新たにドゥルラハ地区より西5キロメートルにある現在地に城を建てることにした。城の建設が始まったのは1715年である。カールスルーエは、このお城を中心に道路が放射状に伸びていくという極めて特徴的な空間構造をしており、同州の第二の都市であるマンハイムとともにドイツのバロック都市として知られる。

歴史が浅い都市だと、そのアイデンティティづくりにいろいろと苦労しなくてはならないのだが、カールスルーエの場合は、いきなり王宮都市としてつくられたので、もうその時点で強力なアイデンティティを有していることになる。王宮から放射状に道路が整備されている都市構造といい、そのユニークさはドイツ屈指である。というか、それ以上のブランディングも特に必要としない。そういう点では恵まれた都市である。

カールスルーエはまたモビリティの優れた都市としても知られている。カールスルーエ・モデルというトラムと郊外鉄道を一体的に運行するシステムは、世界初の試み(直流と交流の両方の電流に対応した車両、二つの異なる法体系に対応した車両や施設)として内外に知られる。カールスルーエ・モデルに関しては、なかなか複雑なので、また機会が設けられたら別途、このブログでも紹介したいと思う。カールスルーエは、このようなシステムだけでなく、最近では都心部において、このトラムの軌道を地下化し、それまでのトランジット・モールをオール歩行者空間にしたり、さらには自転車利用促進にも力を入れており、それまでミュンスターと自転車首都の看板を競っていたエアランゲンを自転車利用率で抜いた。その割には、あまり自転車専用道路などを見ないが、トラムに自転車を持ち込む人が多いので、そういったデュアル・モードでの移動をしている人が多いのかもしれない。

カールスルーエは現在(2023年11月)、都心部の歩行アメニティを改善するのに力を入れている。来るたびにカールスルーエは、よりよくなっているという印象を受けるのだが、この都心部のリ・デザイン事業が終わったら、さらに魅力的な都市へと変貌しているであろう。明日が今日よりもよくなる。これこそが都市政策が満たすべき重要な要件であると思うが、日本ではそのような希望がなかなか持ちにくくなっている。この問題点をしっかりと検討すべきであろう(と書きつつ、大阪の難波駅周辺のリ・デザイン事業のように驚くほど素晴らしい事業もあるので、全然駄目だとは思っていません)。

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