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『AKIRA』を久し振りに読んで、やはりそれほど感心しない [書評]

『AKIRA』は1982年から1990年にかけてヤング・マガジンに連載されていた大友克洋の漫画である。私はちょうど大学時代と被ったりもしたので、結構、連載中も読んでいた。とはいえ、ヤング・マガジンはたまに買うか、喫茶店とかで読むぐらいであったので集中して読んでいた訳ではない。あとで単行本も買ったりしたが、全巻揃えず、最初の三巻ぐらいであったかと思う。

さて、しかし私のそのような関心のなさとは世間の評価はまったく異なり、『AKIRA』は日本の漫画の金字塔的位置づけにある。ハリウッドでも実写版映画が企画されて、本来であれば今年、公開予定であった。原作がつくられてから40年経っても、この人気というのは凄まじいものである。私も五十嵐太郎の著書を読んでいたら、やたら『AKIRA』の引用が多いので、改めて1巻から6巻までを購入して、一気読みをしてみた。

その感想であるが、やはり40年前と同じであまり感心しなかった。いや、荒廃された東京の描写は凄まじいものがあって、確かに建築をやっている学生さんとかは惹き付けられるであろう。バックグラウンドの絵などの描写は素晴らしいし、ミヤコ教の総本山のデザイン(代々木の国立競技場にそっくりだが)なども興味深い。それなのに、なぜ私が惹き付けられないのか。

それはまず、主人公の金田のキャラが今一つであり、とても感情移入できないからだ。まず、アホすぎ。子供のように感情に支配され、前後の見境がない。正義感がないとはいえないが、それは直情的であり、いや、本当、こいつには近づきたくない。そのような中、ケイが常識的な人間で、彼女の目を通じて世の中を捉えようとする読者としての自分がいたが、最後には一緒になってしまって、もうなんじゃこりゃ、の世界である。ご都合主義にもほどがある。いや、SFなので科学面ではご都合主義は致し方ないが、人間関係の描写にご都合主義だとストーリーの面白さが半減する。

あと、建築や都市の描写が素晴らしすぎるのであまりそう思っていなかったのだが、人の描写は決して上手くない。ヒロインのケイも美人なのかそうでないかが分からない。チヨコも男性か女性かはちょっとよく分からない。金田と関係を持っていた保健婦が美人でないのは分かったが。人の描写って難しいのだな、と改めて思わさせられる。

ということで35年ぶりぐらいに読み返した『AKIRA』は、やはりそれほど感心しなかった。ハリウッド的というか、アメリカ人にも分かりやすい単純なストーリーであるというところはあるかもしれないが、日本の漫画はもっと人と人との心の複雑な絡みが描かれている。そこで、ストーリーはリアリティを確保するし、そこに我々は惹き付けられる。例えば『あずみ』や『サイボーグ009』、『鉄腕アトム』、そのオマージュである『PLUTO』…というか、その作者である浦沢直樹の『二十世紀少年』や『MONSTER』なんか、まさにそういう作品である。『二十世紀少年』も主人公はアホといえばアホだが、金田のように感情移入ができないアホではなく、めちゃくちゃ感情移入したくなるようなアホだ。そういう意味では荒唐無稽さでは、はるかに『AKIRA』の上をいく荒木飛呂彦のジョジョ・シリーズでも、『AKIRA』よりはるかに物語の世界に引き込まれる。いや、パラレル・ワールドとか岩人間とか、まったくあり得ないと思いつつ、『AKIRA』のように読み進めることへの苦痛を覚えない。

さて、もう世紀の名作という評価が確立している『AKIRA』に対して、このような批判をするのはまさに神をも恐れぬ、という所業なのだろうが、率直に一個人としての読書感想をここに述べさせてもらう。失敬。



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