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セビージャに来て、改めてスペインの都市デザイン力の凄さを思い知る [都市デザイン]

 スペインのセビージャに来ている。アンダルシアの州都であり、スペイン第四の都市である。人口は70万人程度。新潟よりちょっと大きく、統計的には仙台より小さいが、仙台は周辺を合併して膨らませているので、まあ仙台くらいの規模の都市であると捉えていいと思われる。
 92年にバルセロナでオリンピックを開催した同年、セビージャは万博を開催した。これは、1970年の日本万国博覧会以来の一般博であり、176日間で約4180万人の入場者を数えた。バルセロナはオリンピックを都市計画の手段として見事に活用して、都市を再生させることに成功し、その後、バルセロナ・モデルといわれるようになった。2012年のロンドンがバルセロナ・モデルを参考にオリンピック事業を開催して、同じよう多くの成果を得た。バルセロナに隠れて、それほど注目はされていないがセビージャも万博を契機として大きく都市改造をした。一番大きなインフラ整備はスペイン国鉄によるAVE(新幹線)の整備であるが、都市レベルでもいろいろと手がけている。
 セビージャの万博会場はグアダルキビル川の東側に設置され、それまで川の西側が中心であった都市を拡張させることが意図された。この万博を契機として、アラミージョ橋がグアダルキビル川に架橋され、川といった自然の障害によって行き来が不便であった東西間の移動が随分と改善されることになった。
 とはいえ2016年時点においても、トリアナ地区のようにローマ時代から市街地として発展した地区を除くと、全般的に東側の都市開発は大雑把で郊外的である。テーマパークやコンフェレンス会場など、あまり歩くことを配慮しないタイプの大規模が多く、都市性がなかなか育まれていない環境にあるなとの印象を抱いた。
 それに比して、世界遺産であるカテドラル、アルカサル、市役所を中心とした旧市街地の密度の高さはアーバンな魅力が詰まっている。そのヒューマン・スケール、住居と商業とが混在したミックスド・ユースの土地用途、小さくてもツボを突いたようにオープン・スペースの魅力を効果的に発散させている広場。スペイン人は本当に、このような都市空間を醸成させるのが上手いよな、ということを改めて知らされる素晴らしい密度間である。
 そして、バルセロナのように、旧市街地の壁の周縁部には、高密度の中高層住宅が林立している。これは、旧市街地の北側や中央駅そばに見られる。
 また、グアダルキビル川の東側には、それほど感心はしなかったが、都心部にて明らかに最近、再生事業を行っており、それが、まあ見事なのである。バルセロナのウォーターフロントや旧市街地のスポット的な都市再生事業、ビルバオのネルビオン川沿いの再開発事業、さらにマドリッドのマンサネーレス川沿いのリオ・マドリッドのプロジェクトなどを見た時と同様に、なんて、スペイン人はアーバンでパブリックの空間をつくるのが上手いんだろう、と改めて感心させられた。
 具体的にはクリスチアナ庭園周辺の広場、市役所からプエルタ・デ・フェレスとを結ぶコンスティトゥシオン通りのトランジット・モール、さらにはこの庭園からドン・フアン・デ・アウストリア広場とを結ぶサン・フェルナンド通り。この通りは、ライトレールが中央を走り、それに隣接して自転車専用レーンが引かれ、その外側に歩道が設置されている。そして、歩道と自転車専用レーンの間の空間にはオープン・カフェのテーブルが置かれている。こういう状況を計画的にデザインしているという事実に驚く。いや、日本でももちろん、計画もデザインもしようと思えば出来るだろうが、それを具体化することはなかなかできない。特に、都心部のまさにハートのように重要な場所においては、日本だと大手術のような大再開発をするか、何もしないかのどちらかになってしまう。それに比して、セビージャは都市の歴史的・文化的文脈を継承しつつ、ちょっと公共空間のあり方を変えているだけで、21世紀の人間都市にふさわしい空間をつくりあげているのである。

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(プエルタ・デ・フェレス)

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(プエルタ・デ・フェレスを走るライトレール)

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(サン・フェルナンド通り)

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(コンスティトゥシオン通り)

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(大聖堂)

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(アルカサルの美しい庭園)
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