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参加型まちづくりの創始者でもあるヘンリー・ソノフの話を聞いて、とても勉強になった [都市デザイン]

 台湾で開催されている環太平洋コミュニティ・デザイン会議に参加する。前から気になっていたのだが、これまで参加する機会を得られず、初めての参加になる。この会議は私の友人などが設立に寄与していたので、前から気になっていたのだ、コミュニティ・デザインで発表するネタも特になかったので今日まで来なかったのである。
 さて、発表資料も全然つくらないような準備不足の状態で台北に到着。会場も台北の空港で確認して、会場が台北市でないことに気づいて愕然としたくらいであったのに、なんと私の9人もいない小さなグループにヘンリー・ソノフ氏がいた。『まちづくりゲーム』の著書であり、参加型まちづくりの創始者でもあるヘンリー・ソノフである。こんな大物が来るような会議だとはまったく思わなかったのでも驚いたが、まだ、ご健在だったのかということでも驚いた。
 さて、そのソノフ氏が発表後にコメントしたのだが、それがもう頭が明瞭になるような素晴らしいお話であったので、ここに紹介したいと思う。

「私は、このようなコミュニティ・デザインの話を40年間、聞いている。そして、みなフリンジであり、メイン・ストリームになっていない。これは問題だ。私がずっと続けているサービス・ラーニングはそもそも、フィールド・エクスペリエンス・ラーニングに由来している。そして、このフィールド・エクスペリエンス・ラーニングはジョン・デューイのエクスペリメンタル・ラーニングが元のアイデアである。これは、体験がなければ、知識はしっかりと体得されないという考え方である。
 大きな問題は、大学の教員のほとんどが教育を知らないことである。社会学者は社会学に関してはよく知っているが、教育は知らない。私は、この教育システムを変えようとしてきた。ここにいる他の人達もそうである。しかし、みなフリンジである。これが問題だ。
 コミュニティ・デザインで成功するのはスケールが小さいことである。そうであれば、見えやすいし、またコピーしやすい。そして、コミュニティ・デザイナーにはツールが必要である。これは大工がとんかちなどのツールが必要なのと同じことである。私は、そのために「まちづくりゲーム」を著したのである。日本人はこの本を活用するのがとても上手いと感じる。その結果、コミュニティ・レベルでのトレーニングが成功しているのである。
 大学では、若い人々をプロフェッショナルにする教育をしている。コミュニティ・エンゲージメントの方法論は、時間がかかりすぎるという批判がある。もう一つは、無償の仕事とお金を儲ける仕事との違いである。コミュニティ・エンゲージメントのやり方は有意義ではあるが、プロの仕事ではない。お金が稼げなかったら学生は言うことを聞かない。私は、お金を稼げるようにするために、ツールを開発したのである。
 大学での典型的なスタジオでは、同じテーマを学生達にやらせる。これは、競争させて比較しやすいからである。しかし、学生には得意、不得意がある。一つのテーマでは、学生が得意であればいいが、不得意であればその学生の長所を活かせない。これが最大の問題である。
 コミュニティ・デザインを教育に活用する最大の利点は、教員がエキスパートでなくなることである。学生がエキスパートになるのだ。そして、教員はコミュニティに入ってはいけない。なぜなら、そうするとコミュニティは学生ではなく教員をみるからだ。建築の教員達がこの方法論を嫌うのは、管理できなくなるからだ。
 コミュニティはデザインを分かっていない。コミュニティ・デザインがコミュニティへしているプレゼンテーションはそういう意味で無駄に近い。なぜなら、コミュニティの人達は計画図やデザインなどが分からないからだ。コミュニケーションの方法論を再度、検討し直した方がいいと思う。
 コミュニティ・デザインを始めるためには顧客が必要だ。顧客がいなければ、自分の考えていることが正しくても、それは通用しない。自分が問題であると認識できても、コミュニティという顧客が問題であると認識していなければ仕事にはならないし、コミュニティ・デザインをする需要が生じない。」
 まさに私的には神の至言のように心に響いたのであった。
 私はいつも学会で海外に行くと、なんて無駄なことをしているんだろう、と思う時が多かったが、今日のようなソノフ氏の話を聞けるのであれば、わざわざ来る価値はあるというものだ。海外での学会の考え方も変えさせるような体験であった。本物に会うことの価値の大切さを改めて考えさせられた。


まちづくりゲーム―環境デザイン・ワークショップ

まちづくりゲーム―環境デザイン・ワークショップ

  • 作者: ヘンリー サノフ
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 1993/05
  • メディア: 単行本



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