永沢光雄『風俗の人たち』 [書評]
名著『AV女優』の著者が同書と並行して、雑誌『クラッシュ』にて、風俗界で働く人々に取材したルポルタージュをまとめたもの。女性だけでなく、男性をも取材している。文学的な詩情で、風俗という世界で生きる人達を、客観的でいながらも情を持った筆致で描く。『AV女優』もそうだが、この本の魅力は、著者の取材対象者に対する、距離をおきつつも、常に暖かい眼差しが行間から読み取れることである。1990年から1996年、ちょうどバブル華やかなりし頃から、その破裂、そしてそれに続く不況という世相もが、その取材からうかがえるという点で貴重な史料としても位置づけられる名著であろう。
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