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モール化する都市と社会 [書評]

現在の日本における郊外論の論客は西の三浦展、東の若林幹夫と私は勝手に捉えている。本書は、その若林の編著。執筆者は、若林を除くと80年前後に生まれた3人の若手研究者である。本書は、5つの章と序章と対談から構成されるが若林はそのうちの序章と1章とを執筆している。5つの章の内容は「玉川高島屋SCが登場するまでの経緯」、「戦後日本におけるショッピングセンターの系譜」、」「建築空間/消費空間としてのショッピングモール」、「ショッピングモールという空間の分析」、「商業施設における構造転換」といったものである。若林が担当した章のクオリティは極めて高いが、他は一生懸命、情報整理をしており、それなりに参考となる点もあるが、冗長な印象を受ける。とはいえ、著者等は相当数のフィールドワークを行っており、その調査の豊かさゆえの説得力を本書は有している。若林が対談のまとめて述べている「ショッピングモールは単なる民間商業施設ではない、社会性や公共性をもった都市空間になってきている」ことを、本書を読むと朧気ながらも理解できる。ショッピング・モールという都市の一構成要素が、拡張し、その影響力を巨大化させていく中、都市がむしろショッピング・モールに呑み込まれつつある。それは、なんか、自分から生じた別人格に自意識を乗っ取られるかのような、言いようのない不安を覚える状況である。


モール化する都市と社会: 巨大商業施設論

モール化する都市と社会: 巨大商業施設論

  • 作者: 若林 幹夫
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2013/10/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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