『成長から成熟へ』 [書評]
去年の10月に逝去された希代のコラムニスト、天野祐吉のおそらく遺稿。出版は11月20日だから、亡くなられてから1ヶ月近く経っている。さて、この新書であるが、最初は軽めのエッセイであろうと気軽に読み始めたら、極めて深淵で本質的な資本主義、経済成長、グローバル化、そして広告への批判に溢れていて、思わず襟を正してしまった。200頁ちょっとの新書という薄い本ではあるのだが、内容は濃い。政府の意見広報が間違っているとの指摘、計画的廃品化を促す狂気に対する批判、成長主義から成熟主義へと引っ越す必要性への言及・・・どれも至言である。読み終えて、著者への感謝の気持ちが溢れるような素晴らしいエッセイである。著者のご冥福を心よりお祈り申し上げます。