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城崎温泉を生まれて初めて訪れる [地球探訪記]

 城崎温泉という地名を知ったのは中学の頃である。志賀直哉の短編小説「城の崎にて」を読んだからだ。その小説の日本語の美しさに感銘を覚えた中学生の私は、いつか訪れてみたいと思っていた。しかし、そのチャンスは全然、なかったのである。今回も城崎温泉に行く目的はなかったのだが、豊岡市のコウノトリを育む街づくりを調べるためにやってきたら、城崎温泉がすぐそばにあったので、視察先に行く途中に通り過ぎることができた。ということで、城崎温泉自体に行った訳ではないのだが、その景色や場所は私がイメージしていたものと違っていたので興味深かった。小説から勝手に類推していた城崎温泉は日本海に面していると思っていた。そして、何かリアス式海岸風のところにあるように思っていたのだが、実際の城崎温泉は日本海には面しておらず、川沿いの温泉街であった。あと、深緑の印象であったのだが、訪れたのが初夏であったこともあり、新緑が眩しい、とても明るい感じの温泉街であった。とはいえ、川沿いの並木などは、私がイメージしていたものと似ていた。この川沿いを志賀直哉が歩いて思索したのであるな、と思うとちょっと感慨深い。
 あと、城崎温泉というよりか、ここ周辺地域に言えることであるが、極めて風光明媚なところであることに驚いた。天候が優れていたこともあるかもしれないが、日本の景色でこれほど感動したこともないかもしれないぐらい、美しく牧歌的な田園的な景観であった。イギリスの著名なランドスケープ・アーキテクトであるジェリコが著した「The Landscape of Man」という名著がある。この本で、私が強く感銘を覚えたのは、日本の景観の章であった。ジェリコが紹介する日本のランドスケープはとても美しく、現在のファスト風土はまったくもって異なるものであった。私は日本の地方を訪れると、いつも惨憺たる気持ちになる。これは、景観が醜悪であるからだ。最近、訪れた都市でも、群馬県の太田市、福島県の郡山市、いわき市、埼玉県熊谷市、香川県の高松市、岡山県の岡山市など、ろくな景観ではない。いや、自然景観は美しいのだが、人工的な景観があまりにも醜悪なのである。ところが、城崎温泉周辺は景観が美しいのである。似たような感想は、出雲市や松江市、中国山地の村などを訪れた時にもちょっと覚えた。山陰地方はもしかしたら、そういう日本の伝統的な美しい景観を維持できている珍しい場所なのではないかとも思ったりもする。それは、ある程度、豊かさもあったからではないかとも思う。いや、ただの無責任な印象論ではあるのだが、このような日本の景観で感銘を覚えたことは私にとって、とても嬉しいことであるので記させていただく。

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小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)

小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)

  • 作者: 志賀 直哉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 文庫



The Landscape of Man: Shaping the Environment from Prehistory to the Present Day

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  • 作者: Geoffrey Alan Jellicoe
  • 出版社/メーカー: Thames & Hudson
  • 発売日: 1995/04
  • メディア: ペーパーバック



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