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ユトレヒトの世界最小の世界遺産リートフェルトの「シュレーダー・ハウス」を訪れる [地球探訪記]

ユトレヒトにある世界最小の世界遺産であるリートフェルトのシュレーダー邸を訪れる。ユトレヒトには以前、一度訪れた時がある。3年前だ。その時もシュレーダー邸に向かおうとしたのだが、完全予約制で、当日の予約は受け付けないとの説明を受けて断念したことがある。その日は代わりにミッフィーで知られるディック・ブルーナの博物館を訪れた。

さて、そういうことで今回は事前に予約をしておいた。インターネットで予約をすることができる。どうも、この事前予約制は人気があるからということではなく、一度に入れられる人数が10人にも満たないためだそうだ。

さて、シュレーダー邸を訪れるうえで難しいのは、事前予約制だけではない。それは駅から遠いということである。中央駅からは2キロメートル以上はある。1924年につくられた時は、その場所はユトレヒトの新しい郊外開発地区の端にあった。シュレーダー邸からは広大なる森が展望できた。しかし、今、シュレーダー邸から展望できるのは高速道路である。したがって自動車でアクセスするには問題はないのだろうが、歩いて行くにはちょっと遠い。そこで自転車で行こうと考える。中央駅で自転車が借りられる場所を探してうろうろしたのだが、見つからなかった。そのうち、予約時間が迫ってきた。自転車は諦めて歩いて行くかとも考えたが、道に迷ったら間に合わなくなってしまう。仕方ないのでタクシーで行くことにした。タクシーの運転手は、シュレーダー邸を知らなかった。これは驚きだ。町に一つしかない世界遺産をタクシーの運転手が知らないなんて。とはいえ、これは世界遺産というものをヨーロッパではそれほど重視していないから、まああり得るかもしれないと納得もする。日本人ほど世界遺産を有り難がる国民は、おそらくいないからな(週間「世界遺産」という雑誌があることをヨーロッパ人などにすると、とても驚かれる)。住所を教えて、連れて行ってもらう。住所の道を教えると、すぐに道は分かったので、このタクシー運転手が新人という訳ではまったくなさそうであった。料金は12ユーロぐらいであった。

さて、シュレーダー邸のある住所で車を降りたが、すぐにはシュレーダー邸が見つからなかった。もしかしたら、間違ったところで降ろされたのかと不安になったが、1ブロックほど歩いたら見つかった。シュレーダー邸はオランダらしい煉瓦造りの集合住宅の横に、まるで出来物かのようにくっついて存在していた。

へリット・リートフェルトは、20世紀初頭、芸術運動デ・ステイルに参加し、家具デザイナーとして「赤と青のいす」、そして建築家としては、このシュレーダー邸を残した。シュレーダー邸は、シュレーダー未亡人と子供達の家として設計したが、後年、リートフェルトもここに住むことになる。リートフェルトとシュレーダー夫人は、愛人関係にあった。さて、このシュレーダー邸であるが、その特徴としては壁がないことである。正確には壁はあるのだが、可動でき、あたかもカーテンのような機能を有している。まあ、ある意味で引き戸のようなものだ。滑車をうまく使っていたりして、家具デザイナーとしてのいろいろな工夫が随所にみられる。また、色彩にも工夫がされており、この家はインテリアもエクステリアも赤・黄・青・白・灰・黒の線と面によって構成されている。レゴの家のようである。現代建築として、建築史上に画期的な意味を有しているということはよく分かった。さすが名建築と言われるだけの圧倒的な存在感と意匠である。わざわざ来た甲斐はあった。とはいえ、いわゆる「忍者屋敷」的な形容は、どうかなとは思う。というのは、本家の忍者屋敷のほうが、はるかにカラクリ的な工夫が為されているからである。というか、シュレーダー邸はそもそも忍者屋敷ではなく、デザイン的な意味合いでの工夫であるので、同じ次元で語るのは双方にとってマイナスであると思われる。

また、事前予約制ということであったが、どうも当日とことこやってきた人も「空いてるから大丈夫」と言われていた。結構、いい加減だなあ。ただ、私は以前、ユトレヒトの市立博物館でチケットを購入しようとしたら断られたので、このような飛び込みはシュレーダー邸においてのみ可能なことなのではないかとは思われる。結局、私は、この飛び入り参加をした中国人留学生(ユトレヒトの大学に留学している)と見学したが、我々二人しかツアー参加したものはいなかった。その後のツアーは韓国人3名だった。東アジアばっかりじゃないか。

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(シュレーダー邸の前を走る高速道路。シュレーダー夫人もリートフェルトも猛反対をしたのだが、願いは聞き入れられなかった)
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