SSブログ

『リーディングズ 都市と郊外―比較文化論への通路』今橋映子 [書評]

郊外本のリーディングズ。リーディングズとは、必須の論文をまとめたものであり、このような本が「郊外」をテーマに編集されたことには意義があるかと思われる。もちろん、何をもってして「必須」であるかを判断するのは筆者の視点によるので、私のように工学的な都市計画を学んだものにとっては、第二章の「19世紀パリ論の成立」などは、その「必須」性が理解しにくく、比較文化論的に郊外を捉えると、こういう論文を踏まえておくことが重要なのだな、ということを認識できた程度の価値しかなかった。また、編者の専門が写真であるため、写真や映像、漫画といったメディアでの紹介が多く、そういった意味では、郊外論を研究するうえでの基本的な二次資料がたくさん網羅しているインベントリーとして本書は位置づけられるのではないかとも思われる。つまり、本書を読んだだけでは、「郊外」の理解はさほど進まないということである。「郊外」をテーマにリーディングズを編集するということは、意義はあるが、一方で、そのような試みはなかなか難しいのではあるな、ということも理解させられる。読んだ後、欲求不満に陥る。


リーディングズ 都市と郊外―比較文化論への通路

リーディングズ 都市と郊外―比較文化論への通路

  • 作者: 今橋 映子
  • 出版社/メーカー: NTT出版
  • 発売日: 2004/12
  • メディア: 単行本



タグ:今橋映子
nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0