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隈研吾・清野由美『新・都市論TOKYO』 [書評]

「汐留」、「丸の内」、「六本木」、「代官山」、「町田」という5つの東京の地区と番外編として北京の再開発地区を、現代の日本を代表する建築家である隈研吾とジャーナリスト清野由美が訪問し、そこで感じたことを対談するという構成の本。こう書いてしまうと、なんか大して面白くなさそうに聞こえるかもしれないが、いやはやこれが実は非常に刺激的な内容になっている。この本を刺激的にしているのは、隈研吾の対談相手である清野由美が突っ込み役として極めて有効に役柄を果たしているからである。清野由美の立ち位置は素人代表ということであるが、プロのジャーナリストとして、非常に鋭い質問というか、聞きたくても聞きにくいことをずばずばと隈研吾に質問し、時には問い詰めていく。隈研吾も、どうにかその鋭い質問をかわそうとするのだが、清野由美が食らいつく。そのたじたじ加減が、臨場感溢れる文章で描かれていて面白い。そして、この清野の食いつきが、隈研吾の都市を捉える鋭い分析力を引き出している。ぼけてばっかしじゃ駄目だと気づいた隈が、しっかりと誠実に都市論を展開しているところは好感が持てる。現代の東京という都市で何が起きているかが非常に分かりやすい本である。サラリーマン的根性が東京をはじめとした都市を駄目にしているという解説は、まさにその通りであると思うし、汐留はそのサラリーマン的根性が産み出した最悪の見本という指摘もまさにその通りと首肯する。日本人は優秀だけど、役人根性とサラリーマン根性が本当に世の中を悪くしてしまうんだよねえ、ということを東京の都市の無様な状況を目の前にすると感じさせられていたが、まあ、その考えを改めて認識させた本である。

さて、実は著書には二人ともお会いしたことがある。清野さんはハイテンションな人というイメージであったが、いやはや本書を読み、実に聡明な人であることが理解できた。また、機会があれば是非とも再会したいと本書を読んで思ってしまった。

新・都市論TOKYO (集英社新書 426B)

新・都市論TOKYO (集英社新書 426B)

  • 作者: 隈 研吾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/01/17
  • メディア: 新書



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