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ジェネシスの『怪奇骨董音楽箱』 [ロック音楽]

ジェネシスのメジャー・デビューでは2枚目、実質3枚目のアルバム。前作とメンバーが交代し、ドラムにフィル・コリンズ、そしてギターにスティーブ・ハケットが入る。アンソニー・フィリップスは作曲者としては飛び抜けていて、ジェネシスの支柱的存在だったようだが(ピーター・ガブリエルが脱退した時、マイク・ラザーフォードはアンソニー・フィリップスが辞めた時の方がずっと落胆したと述べていた)、ギターに関しては、ハケットの方がはるかにうまい。技術的な点はもちろんだが、ハケットの方が音づくりが上手く、また、そのリフやソロがはるかに攻撃的であり、アルバムにピンと張るような緊張感をもたせることに成功している。フィル・コリンズは、この当時からもう相当、手数が多いドラムを叩いているが、まだ、このアルバムでは蛸ドラムの片鱗が見え隠れする程度である。

前作の『侵入』でも「ナイフ」のような相当、攻撃的でアドレニンをどっと分泌させるようなハードな曲もあったが、その他は比較的牧歌調であったのに比べて、このアルバムの曲群は遙かにドラマティックでまた緊張感を孕んでいる。大曲は「ミュージカル・ボックス」、「ザ・リターン・オブ・ザ・ジャイアント・ホッグウィード」そして「サルマシスの泉」であるが、それらの間に入っている小曲群の質も高く、欠点のないアルバムである。二人の新メンバーの加入ということもあるが、前作より数段、ミュージシャンとしてのレベルが上がっている。特に、トニー・バンクスのキーボードは、もうバンクス節とでもいうべき、絶妙なバッキングと強烈な印象を残すソロを幾つかの曲で披露している。

それにしても邦題の『怪奇骨董音楽箱』というタイトルはおどろおどろしい。その後、このバンドが、「インビジブル・タッチ」などという軽薄なポップ・ロックを演奏するとは、誰がこの時、想像し得たであろうか。
Nursery Cryme

Nursery Cryme

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Atlantic / Wea
  • 発売日: 1990/01/01
  • メディア: CD



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