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アッシャースレーベンは駐車場を巨大な看板で隠す [都市デザイン]

アッシェアーズ・レーベンという都市というか町がザクセン・アンハルト州にある。ここは人口が3万2千人弱の中都市である。世界遺産のあるケドリンブルクの東に位置し、マグデブルクから自動車で1時間ほどの距離にある。オートバーンは走っていなく、しばらく田舎道を走ってアクセスしなくてはならない。さて、この都市を訪れた理由はただ一つ。IBAザクセン・アンハルトのプロジェクトで興味深い試みを行っているからだ。それは、環状道路沿いの建物が壊されて駐車場に置き換わった場所が、道路から見られないように巨大な看板で視界を遮るようにしているからである。この看板は、ちょっとポップな絵が描かれており、お洒落である。運転している人の気をひいて事故を起こしたりするんじゃないか、との心配もないわけであるが、この看板のお陰で、家が壊されて駐車場になることで、街並みの連続性が視界的に遮断されてしまうことを回避している。看板は家ではないので、まあ景観の連続性は途絶えてしまうのだが、それが駐車場であるか看板であるかでは大きな差がある。少なくとも、スカイラインの連続性は維持することができる。

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このような景観的な連続性に関しては、ドイツだけでなくアメリカなどでも強く意識していることである。自動車から見る時の景観のリズムといった観点から都市空間のデザインを考えるのである。これは、古くはマサチューセッツ工科大学の都市デザインの教員であったケビン・リンチがダン・アップルヤードとともに「自動車からの景観」といった内容の論文を書いたことがあるが、私もアップルヤードの考えを継承するカリフォルニア大学バークレイ校で都市デザインを勉強していた時に、空間のリズムを考えることの重要性を随分と教えられた。ドイツにおいてはさらに都市デザインの考えがしっかりしているので、アメリカよりもさらに強く景観の継続性を意識しているのであろう。そうでなければ、縮小している中小都市にこんな巨大な看板を設置しようなどとは考えないと思われるからである。

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この事業は国際建築展(IBA)の一環として行われているのだが、都市が縮小することのダメージをなかなか安上がりに対応していて感心する。少年がブランコをしている女の子のパンツを覗き込んでいる図柄は、ちょっと日本人の私には理解がしにくいが、まあ全般的には興味深い試みであり、日本でもシャッター商店街などに適応できそうである。また、テナント等が入らないと中心市街地でも駐車場に転用する地主が多いが、それによって櫛が抜けるように周辺にもマイナス効果を及ぼすということを、日本の商店街や行政もより強く意識した方がいいのではないかとも思わせられる。

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