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ローマで広場めぐりをする [都市デザイン]

ローマを生まれて初めて訪れる。これまで訪れる機会がなかった。都市計画を専攻しているにも関わらず、ローマを訪れたことはなかったのだ。都市計画史の教科書等で最も頁が割かれている都市はおそらくローマであろう。都市計画史のテストでもローマは必須で、私が学生をしていた時も問題に出た。また、私はイタリア映画が好きなので、フェデリコ・フェリーニの『フェリーニのローマ』、『甘い生活』などの映像を通じて知っていた。また、ハリウッド映画ではあるがオードリー・ヘボン(ヘップバーンと言われているが、私が奉職する明治学院風にヘボン)が主演した『ローマの休日』も本当の映画の主人公はローマである。ということで、ローマに対する知識は結構あった。ということで、イタリアでどこかに1泊する機会があったのでローマを選んだのである。

といっても、ローマでの滞在時間は6時間もない。当然、実施するのは街歩きであり、博物館などは一切入らないで、ローマを効率よく知るための街歩きコースを考えることにした。さて、ローマで何が見たいかというと広場である。スペイン広場やナヴォーナ広場はマストである。さらに、スペイン広場と同様にミケランジェロが設計したカンピドーリオ広場、そして教皇シクストゥス5世がローマの再計画を策定した時に焦点として位置づけたポポロ広場などをぐるっと巡ることにした。地図で場所を確認すると4時間ぐらいで巡れそうだ。これらに加えて見たいのは、コロシアム、トレヴィの泉、サンペドロ寺院である。コロッセオやトレヴィの泉は比較的近く、ルートに組み込まれるが、サンペドロ寺院はちょっと難しそうだ。時間がありそうだったら足を延ばすようにする。

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(コロッセオは長蛇の列)

ということで、広場めぐりをした。幸い、ホテルがテルミネ駅のそばだったので、ホテルに荷物を預ける。まずは、とりあえず端っこにあるコロッセオを訪れる。コロッセオは恐ろしく存在感のある建物であった。すごい迫力だ。一つの建築物でこれだけ迫力をもって迫ってくるものは何があるだろうか。私が経験したものではメキシコ・シティのテオヘタカン、サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジ、ジョグジャカルタのボロヴドゥールやプランバナン寺院、バルセロナのサグラダ・ファミリアくらいか。もちろん、エジプトのピラミッドやチベットのポタラ宮、インドのタージ・マハールやカンボジアのアンコール・ワット、ギリシアのパンテオンなどは見たことがないから、まあ私が迫力を覚えたとしても、それは大した意味はない。とはいえ、個人的には驚いた。コロッセオの中に入りたかったが、パリのエッフェル塔のような長蛇の列ができていたのでパスする。次に向かったのはカンピドーリオ広場である。

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(カンピドーリオ広場は分かりにくい)

この広場は見つけるのに苦労した。どうも私が理解したローマの都市のオリエンテーションと、この広場の場所のオリエンテーションが一致しないのである。隣に巨大なヴィットリアーノ記念堂があるからかもしれないが、行きにくいし、そこに広場があるとは想定しにくい場所にある。坂をのぼったところに広場はある。広場はアクセスとなる階段を除いた三つの面を建物のファサードによって囲まれている。しかし、これらの建物があるためにせっかくの高台にあるのに展望は一方向に限られている。しかも、その高台からの展望は都市軸になっていない。ヴィットリアーノ記念堂が都市軸になっているのである。この記念堂は1911年に完成した。もしかしたら、教皇シクストゥス5世が設計したローマの都市構造を壊してまでこの記念堂をこの場所につくったかもしれないと邪推する。

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(ナヴォーナ広場は南北に細長く、奥行き感が演出されている)

次にナヴォーナ広場を訪れる。ここは3つの噴水があり、特にベルニーニの設計による広場の真ん中の噴水は、四つの大河を表しており大変興味深い。この広場は細長い長方形の形状をしているのだが、その結果、非常に奥行きがあるように感じられる。また、何より自動車だらけのこのローマ市街地で、自動車が入れないこの広場のアメニティは非常によい。素晴らしい広場であり、感心する。

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(ポポロ広場は北からのローマの入り口に位置していた)

次にポポロ広場を訪れる。ポポロ広場は教皇シクストゥス5世が計画した広場で、ローマの入り口に位置する。人はこのポポロ広場からローマに入るのである。その広場からは3つの軸線が延びていき、スペイン広場、ヴェネツィア広場等と繋がっている。これが、教皇シクストゥス5世が描いたローマの都市軸である。その拠点としてのポポロ広場は南方を取り囲む建物がつくるファサードも威厳があって貫禄がある。

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(浜野安宏氏も絶賛のスペイン坂)

スペイン坂とスペイン広場は、もう完璧と形容したくなるような素晴らしい広場と空間であった。その後、多くの広場がここを模倣したので、本来所有していたオリジナリティはあまり感じられないが、この坂をうまく利用した広場のつくりかたは素晴らしいと思う。ローマの休日でも、ここは魅了的に演出されていた。かの浜野安宏氏もスペイン坂が最高の広場だと言っていたような気がする。確かに、このような広場空間を持つ都市は特別の魅力を放つであろう。

とはいえ、この広場へのアクセスは必ずしも最高というべきではなく、ローマは拠点だけに注目すれば比類するものがないほど素晴らしい都市ではあるが、それを結ぶ線としてのネットワークはまったく関心ができない。ドイツのベルリン、ミュンヘンなどと比べても全然、駄目だと思う。せっかくの素晴らしい拠点が、自動車洪水の荒海の中に孤島のように浮かんでいるようにイメージされた。まったくもってもったいない。教皇シクストゥス5世という天才的都市計画家の遺産にいつまでも依存していては駄目なのではないか、と思わせられる。最近、医者をやっている友人がやはりローマを一人で歩いて散策して、私に「都市計画的にみてローマは駄目なんじゃないですか」と言ってきたので驚いた。都市計画の素人でも分かるほどローマは問題を抱えているのである。でも、広場は素晴らしい。この広場を訪れるだけでも来る価値はある。なぜなら、広場は写真でみるだけでは到底理解できない、五感で体験するものであるからだ。って今まで来られなかったのに、偉そうに言う資格はないですね。
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