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ゴードン・クレンの『ザ・コンサイス・タウンスケープ』はイギリス版『アメリカ大都市の死と生』だ! [書評]

イギリスの都市デザイナーであるゴードン・クレンの『ザ・コンサイス・タウンスケープ』を今さらながら読む。本を買ったのは実は1995年頃だから14年も積ん読をしていた訳だ。こんな名著をこれだけの期間、積ん読していたという事実は誠にもって恥ずかしい限りではあるが、サバティカルで時間もあるためにようやく読めたのである。とはいっても、実は読むのに時間がかかるほど頁数は多くない。さて、さすが名著の誉れ高いだけあって、非常に示唆に富むことが書かれている。とはいえ、この時代からすれば新しいことはあまり書かれておらず、むしろ既存の知識や考えを再確認するといった感じで本を読んでいた。ステブネッジやハーロウのニュータウンを否定していて、随分とジェイン・ジェイコブスに近いなと思い、まあ彼女の影響を受けたのであろうと勝手に推測した。そして、出版年をみて驚いた。なんと1961年とある。ジェイン・ジェイコブスの処女作である『アメリカ大都市の死と生』(これは明らかなる誤訳で本当は、偉大なるアメリカの都市の死と生だが、読者を混乱させるとよくないのでそのまま通す)の出版年と同年であった。このような指摘、すなわち都市計画行政を都市デザインという観点からこれだけ批判している本が、ジェイン・ジェイコブスと同時に出版されていたというのは驚きだ。その事実を知り、この本の偉大さを知る。イギリスの都市計画、都市デザインの奥深さを思い知らされた気がする。

印象に残った点は、ガイドラインのようなルールに基づいて考えもしないでデザインをする愚を指摘したところと、同じようなデザインの家が連なることは、文章でいえばAAAAAのようなものだという指摘、空間移動における動的な統一感の重要性の指摘、そして1960年代前半においてニュータウンをぼろくそに批判したところである。人と空間との関係性、公共性のデザインといったテーマの文も奮っている。とはいえ、この本が出て50年ちかく経ち、これらのテーマは随分と掘り下げられたので新鮮味はなかった。しかし、これは逆にいえば、クレンの影響が広範囲に及んでいたためかもしれない。

ただ、このクレン氏は随分とお茶目な性格のようで、文章はエッセイ風で冗談が多い。まあ、それはそれで微笑ましいのではあるが、私としては親爺ギャグより、もっとクレン氏の鋭い指摘をばしばしとストレートに書いてもらった方がより説得力が増してよかったと思う。とはいえ、この本は素晴らしい。私が駄目なのは、こういう偉大なる本を積ん読してしまっていることが原因なのではないかとさえ思わせられた。


Concise Townscape

Concise Townscape

  • 作者: Gordon Cullen
  • 出版社/メーカー: Architectural Press
  • 発売日: 1995/03/24
  • メディア: ペーパーバック



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